2024.11.14
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2018.08.17
マーケティングナラティブマーケティングの概要と手法
おはようございます。マーケティング部門に入社したシナリオライターです。
シナリオライターがなぜマーケティングに必要なのか?
答えは、これからはナラティブマーケティングが主流になるからです。
海外では既に主流となっているナラティブマーケティングですが、まだ日本ではあまり知られていません。
この記事では、ナラティブの概念、マーケティングにおける活用について解説します。
国内外の記事を多数参照・引用しましたので、理解のためのインデックスとしてもご活用いただけます。
更に、理解の補助としてナラティブを活用している医療・保育業界、ナラティブについての議論が盛んなエンタメ・ゲーム業界について補足しました。
参考:Forbes JAPAN 「2017年は「ストーリー」型マーケティング終焉の年に」
「ナラティブ」も「ストーリー」も和訳すれば「物語」となりますが、ニュアンスが異なります。
ナラティブとストーリーの違いは、話者自身について語られた物語か、任意の対象についての物語かという違いです。
たとえばユーザーにとって、ナラティブはユーザーが主役となり体験する物語であって、ストーリーは誰かについての物語ということになります。
現状、ストーリーテリングマーケティングでは、企業は企業自身や商品・サービスについてのストーリーをユーザーに伝えることで商品・サービスの良さを伝えようとしています。
しかし、校長先生の長話がねむたいように、企業のご自慢ストーリーにユーザーは興味がないのです。
対して、ナラティブマーケティングでは、ユーザーそれぞれの語りを対象にします。
企業自身についての物語もあれば、ユーザー自身の物語もあり、個人・法人それぞれに、自分自身しかできない自分語りがあります。
ユーザーそれぞれを主人公におき、ユーザ自身ではなく、ユーザーの語る物語に対してアプローチするのがナラティブマーケティングです。
“Narrative Marketing is a customer-centric model.”
「ナラティブマーケティングとは、ユーザー中心のモデルだ」
引用:Medium “Brand Story VS Narrative Marketing: Which Is Really Better?”
ユーザーが語っている媒体は多数あります。
SNSをはじめ、情報化社会では多くのユーザーが自分のことを語り、語るための体験を有しています。
たとえば睡眠不足でお肌のボロボロのOLがTwitterで、
「肌ボロボロなのに〇〇(栄養ドリンク)切れてる! どうしよう><」
と呟いていたら、呟きを見た人は「〇〇という栄養ドリンクが肌にいい」と認識するでしょう。
また、まだ語られていない市場であれば、ラッキーです。語るためのイベント・体験を提供することで、ユーザーにとっての自分事化が進むでしょう。
たとえば平日終電前のオフィス街の改札前で栄養ドリンクのサンプルを配るとします。SNSでの発信を促すにはインパクトが必要ですが、深夜に配っているというだけで非日常感、ハレのイメージがあり、共有したい体験となります。
「深夜なのに〇〇配ってたwww まじ卍ありがたみ~」と呟かれた場合、栄養ドリンクの名前が広がるだけではなく、企業のイメージは上がり、さらに受け手には深夜にOLが飲むのにふさわしい(おそらくカフェインなどが入っていないと考えられる)栄養ドリンクであるというイメージが自発的に沸くでしょう。
体験の自分事化がすすめば、自発的にユーザーが語ることになり、「口コミ」となって広がります。
ユーザーの語る悩みや現状を理解しましょう。
ここで重要なのは、ユーザー自身については考慮しないということです。あくまでユーザーの語りに注目します。
たとえ睡眠不足でお肌がボロボロのOLでも、「お肌ボロボロ~明日デートなのにしょんぼりんぐ↓↓↓」と呟いていれば、肌荒れの改善より肌荒れを隠す方に意識がいっているのではないかと考えられます。
その場合、栄養ドリンクや皮膚治療薬よりファンデーションを提案した方が即しています。
企業やサービスの提供者は得てして専門性をもち、ユーザーより優位に立ちがちです。いけません。
一方的に語るのではなく、ユーザーの語りに対して、対話するように、企業の側からもストーリーを提供します。
このストーリーにおける主人公はユーザーです。
ユーザーを主体としたストーリーを提供することで、ユーザーはサービスや商品を使用した「体験」を疑似的に得ることができます。
たとえば睡眠不足でお肌がボロボロのOLに対して、ファンデーションの動画広告を発信するとします。
「美人女優の笑顔、『イキイキとした美しい女性に〇〇ファンデーション』」という広告と、
「(スマホの通知、画面には「明日の予定:デート💛」、時計は0時を回っている)暗いオフィスで栄養ドリンクを飲み干すOL、『かわいいは作れる、疲れは隠せる、クマに効く〇〇ファンデーション』」
といった広告のどちらがユーザーに寄り添っており自分事化されるかは自明です。
ナラティブマーケティングは即座に売り上げに貢献するものではありません。
しかし、ナラティブな物語の力強さにより、ナラティブマーケティングは支持されています。
提供するサービスや商品が、単純なものだとは限りません。
商品がよいものであり、機能が多いほど、説明は複雑になりがちです。サービスが革新的であればあるほど、市場が整備されていないため、理解は困難になります。
ですが、物語を体験することで、どんなに複雑なサービスや商品であっても、使用した結果の「自身のたのしさ」「自身の便利さ」を共有し知ることはできます。
ユーザーは「ドリルが欲しいのではなく穴が欲しい」とよく言いますが、本来は「穴をあけて作った本棚で家族に褒められる」という物語の体験こそ、ユーザーが欲しいものなのではないでしょうか。
ユーザーに寄り添った物語を提供することで、ユーザーは商品やサービスを使用したメリットを本質的に理解することができます。
“People don’t buy the best products and services, they buy the ones they can understand the fastest”
「人々は最高の商品を買うのではなく、一番はやく理解できたものを買う。」
脳科学によれば、脳の領域の一部は実際の経験と読書などで得た物語を区別して認識できない構造になっています。
物語を読むときも、実際に体験したときも、脳では同じ神経学的領域が刺激されるのです。
つまり、物語を読んだり、見たりすることは、ユーザーにとって実際にその物語を体験することと同義なのです。
孫子の兵法では「百聞は一見にしかず、されど百見は一行にしかず」という言葉がありますが、脳科学の分野から見ると一見≒一行ということになりますね。ただ、専門的な分野のため賛否が分かれそうですので、もしお詳しい方がいたらぜひご指摘いただきたいです。
参考:The New York Times “Your Brain on Fiction”
しかも、ナラティブマーケティングで提供する物語はユーザー自身に寄り添った物語であるので、体験はさらに自分事化されます。
ユーザーは未知の商品やサービスを買うのではなく、自身の物語の一部を買うような感覚で、商品やサービスに手を伸ばしやすくなります。
When a customer purchases your product, they must feel as if they are buying part of the story.
「顧客があなたの製品を購入するとき、彼らは物語の一部を買っているかのように感じなければなりません。」
引用:Neil Patel”How to Create an Authentic Brand Story that Actually Improves Trust”
ナラティブマーケティングは、個人それぞれを主人公とした語りに対する施策です。
ナラティブマーケティングを実践することで商品やサービスについてユーザーの理解が進み、あるいは市場を開拓することができます。
“The customer is the hero of the narrative, not us.”
「ナラティブの主人公は顧客だ、われわれじゃない。」引用:Medium “Brand Story VS Narrative Marketing: Which Is Really Better?”
“Most importantly, it starts you on a journey ALONGSIDE your customer, not just FOR your customer.”
「最も重要なのは、顧客に対して考えるんじゃない、顧客に寄り添って考えるってこと。」
医療・保育の現場ではナラティブの活用が進んでいて参考になります。
医療におけるナラティブアプローチとは、患者や困っている人に、その人自身のことを話してもらい、その物語について治療や援助を施すというものです。
ここでのポイントは、困っている人自身や問題そのものではなく、困っている人が語った物語を対象とすること。
医師などの専門家は、専門知識がある分、患者との間に上下関係ができやすいですが、対話には上下関係は必要ありません。
まず、専門性を放棄し、患者と同じ土台に立ちます。
むしろ、患者について語ることができるのは患者自身しかいないので、患者の方が上位に立つこともあるでしょう。
そして、患者の話す物語について対話を通して問題解決を図っていきます。
保育の現場においてのナラティブアプローチの手法については、下記のブログ記事に詳しく書かれていてとても参考になりました。
参考:保育のお仕事「専門性を捨てる!「ナラティブ・アプローチ」を使って子どもや保護者の心をほぐそう」
混乱を招きやすいのですが、ゲームやエンタメにおける「ナラティブ」という用語の使用方法は微妙にニュアンスが異なります。
しかし、ナラティブという概念を通じて、従来のエンタメ体験よりもユーザー体験に寄り添おうとする姿勢や、ユーザーを「登場人物」として扱おうという姿勢は、マーケティングにおいても参考になります。
ポイントはナラティブについての理解を深めることもさることながら、ナラティブという概念を用いて、いかにプレイヤーに対して魅力的な物語体験を(できれば低コストで)提供するか、そのヒントを提示するという点
引用:INSIDE「ゲームのナラティブはどうして議論がわかりにくい? 立命館大学ゲーム研究センターの研究員が徹底議論」
エンタメにおいてナラティブは「物語の中に受け手自身の視座が用意され、受け手自らが体験している感覚を得られる物語」をさします。ユーザーは主役であったり脇役であったりしますが、鑑賞者・傍観者ではなく「登場人物」として扱われます。
よって、エンタメにおけるナラティブな物語は、受け手によって物語自体の内容が変化します。
「ホラー映画を見てるのがストーリーで、お化け屋敷に入ってるのがナラティブだよー。一連の出来事をウォークスルーしてる感じかなー。」
引用:君たちは永遠にそいつらより若い「ナラティブ【narrative】とは。」
ナラティブは、単にこういうことがあったという“体験”ではなく、プレイヤー自身に“経験”として刻み込まれることが必要だ
つまりナラティブとは、それぞれのプレイヤーの心の中にしか存在しない
引用:電撃オンライン「世界ではストーリーに代わる概念“ナラティブ”が語られている――『DQ』はナラティブで、『FF』はナラティブではない【CEDEC 2013】」
たとえば、ハリウッドでは、意図的に作品内に「観客の視座」を用意し「自分事化」する工夫を既に始めています。
2018年夏に公開されたハリウッド大作「オーシャンズ8」では作品内で、前後の脈絡なく「この犯罪はわたしたちのためじゃなく、犯罪に憧れる8歳の女の子のためにやろう」というシーンが挟まります。8歳の女の子は作中には一切登場しませんが、観客は映画の主役たちに憧れる自分こそが「8歳の女の子」なのだ、と気づかされるのです。
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