2023.10.23
スクラム開発とは?アジャイルとの比較から始める最適な開発戦略まで解説
自社のソフトウェア開発にスクラム開発を導入するには、まずスクラム開発についての理解を深める必要があります。しかし、検索してもいまいち理解できないとお悩みではないでしょうか。
そこで本記事では、スクラム開発についてわかりやすく解説します。なお、この記事でわかることは以下の通りです。
この記事でわかること
- スクラム開発について
- スクラム開発とアジャイル開発の違い
- スクラム開発のメリットとデメリット
- スクラム開発を失敗させないためのポイント
目次
スクラム開発とアジャイル開発
スクラム開発についてより深く理解するためには、アジャイル開発について知っておいた方がよいでしょう。理由は、スクラム開発はアジャイル開発の一種だからです。この章では、はじめにアジャイル開発について解説し、その後スクラム開発について解説します。
アジャイル開発とは
アジャイル開発とは、システムやソフトウェアの開発方法の一種です。昨今の開発業界で、最も採用されている開発方法だといっても過言ではありません。
アジャイル開発の特徴は、計画段階では大まかな仕様だけを決定して細かな部分まで決めないという点です。詳細を詰めるのは、開発の段階です。機能ごとに、計画、設計、実装、テストを1〜4週間のスパンで繰り返します。
そうして完成した機能を集めてひとつのシステムにします。このような開発方法なのは「開発中には変更や追加が必ず起こる」という考え方だからです。なお、アジャイル開発のメリットは以下の2点です。
- 開発スピードが早い
- 開発の途中でシステム内容に変更、追加があった際、柔軟かつ迅速に対応できる
そのため、すでに作るものが明確になっている場合は、これらのメリットの魅力はなくなります。
補足として、作るものが明確になっている場合は、アジャイル開発ではなくウォーターフォール開発が適しています。ウォーターフォール開発とは、アジャイル開発が発明される前に主流だった方法です。最初に機能設計、計画を細かな部分まで立てた後、設計や計画に沿って開発を進めていきます。
こちらの記事では、 アジャイル開発の手法や採用メリットなどを詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
スクラム開発とは
スクラム開発とは、アジャイル開発の一種です。3〜9人ほどのチームに分かれて、それぞれのチームにタスクを分散させながら開発を進めます。チームの分け方は、機能ごとに分けるのではなく、すべての機能に対応できるチームを複数個作るイメージです。
開発中はアジャイル開発の特徴でもある、1〜4週間で計画、設計、実装、テストのサイクルを繰り返します。チーム全体でひとつのシステム開発に取り組むため、開発中はエンジニア同士で積極的にコミュニケーションが発生します。なお、スクラム開発には以下の役割を持った人が関係するため、表にまとめました。
名称 | 立場 | 役割 |
---|---|---|
プロダクトオーナー | プロダクトの責任者 | 開発に関する重要な事柄の決定権を持つ。これから開発するシステムのイメージを全体に共有する。 |
スクラムマスター | 開発チームのリーダー | チームメンバーが開発をスムーズに進められるように環境を整えたり、タスクを割り振ったりする。 |
開発チーム | 開発チームのメンバー | 実際に開発を行うメンバー。 |
ステークホルダー | エンドユーザー スポンサー |
開発チームに資金を提供するスポンサー。プロダクトオーナーやスクラムマスターに意見を述べることがある。 |
スクラム開発の歴史
1986年、野中郁次郎と竹内弘高によって「The New New Product Development Game」という研究論文が書かれました。そのなかで、柔軟で自由度の高い開発手法として紹介されていた「スクラム」がスクラム開発の始まりです。
7年後の1993年にスクラムは、アメリカのケン・シュエイバーとジェフ・サザーランドが発表した「アジャイルマニフェスト」と「SCRUM Development Process」によって発展します。その後、ケン・シュエイバーとジェフ・サザーランドがスクラムガイドを作成しました。
スクラムガイドとは、スクラム開発におけるルールが載っているガイドです。ルールのほかにもスクラムの定義、理論、チーム内の役割、スクラムイベント、作成物、用語集、最新版への変更点などが書かれています。そして、1995年に正式に正式なフレームワークとして開発されました。
スクラム開発のメリット・デメリット
スクラム開発には魅力的なメリットもありますが、注意すべきデメリットもあります。この章では、それぞれ詳しく解説します。スクラム開発を採用するかどうかの判断材料にしてください。
メリット
スクラム開発のメリットは以下の5つです。
- 作業効率をアップできる
- 工数の見積もりがしやすい
- 仕様変更にも柔軟に対応可能
- 問題が起きたときの発見が早い
- 短い期間でクオリティの高い成果が出せる
なかでも、魅力的なメリットである作業効率がアップできるという点について解説します。
スクラム開発は、チームメンバーが同時に開発を進めるため、短い時間での開発が可能です。また、それぞれにタスクと役割が与えられるため、自分の考えを持って作業するようになります。結果、指示待ちの時間が生まれません。
スクラム開発では優先順位の高い機能から先に、短いスパンで開発と実装を行うのが特徴です。高い頻度でフィードバックを受け取れたり、必要な機能がそろった時点でリリースできたりします。
デメリット
スクラム開発のデメリットは以下の5点です。
- 開発の全体像を把握しづらい
- プロジェクトが肥大化する恐れがある
- 高いスキルを有するエンジニアが必要となる
- チームメンバーが離脱すると大きな影響を受ける
- コミュニケーションをとらないと開発が円滑に進まない
なかでも、とくに注意したいプロジェクトが肥大化する恐れがあるという点について解説します。スクラム開発は、プロジェクトの肥大化が起こるケースがあります。理由は、仕様の変更が柔軟に行えるというメリットの裏返しになります。
たとえば、開発中に仕様の変更というタスクが追加されるごとに、開発にかかる時間が増えます。また、仕様の変更により開発の方向性が変わると、新しい作業が追加され作業の工数が多くなります。その結果、スケジュールが立てにくくなったり、予算や時間、人材などが圧迫されたりするでしょう。
スクラム開発の流れ
スクラム開発は以下の流れで進めます。
- プロダクトバックログとスプリントバックログの作成
- 進捗の報告・共有
- 機能の確認・評価と改善
- スプリントの振り返り
しかし、会社独自の工程がくわわったり、どこかの工程を省いたりするケースも珍しくありません。そこでこの章では、スクラム開発の流れのなかでも、一般的な流れについて工程ごとに詳しく解説します。
プロダクトバックログとスプリントバックログの作成
はじめにプロダクトバックログとスプリントバックログを作成します。
プロダクトバックログ | 開発する機能を一覧にしたもの。それぞれの機能には優先順位がついている。 |
---|---|
スプリングバックログ | スプリントのなかで実装する機能の一覧。プロダクトバックログの優先順位をもとに作成される。 |
プロダクトバックログにおいて、優先順位をつけるのはプロダクトオーナーです。優先順位はビジネスでの必要性や、ユーザーにどのような価値があるのかという情報をもとに決定されます。そうして決定された優先順位をもとに、スプリントバックログが作成されます。
なお、スプリントとは、計画、設計、実装、テストのサイクルの名称です。スプリントひとつの期間は、1〜4週間が一般的です。補足として、スプリントバックログを作成する会議を「スプリントプランニングミーティング」と呼びます。
進捗の報告・共有
スクラム開発では、毎日決まった時間に会議を行うのが特徴です。これを「デイリースクラム」と呼びます。デイリースクラムでは、以下のような内容を話し合うのが一般的です。
- 課題、問題点、懸念点
- これまで実施してきたこと
- その日に実施する予定のタスク
開発チームは、これらの報告内容をもとにその日のタスクを決めます。
なお、デイリースクラムは15分程度で終わり、そこまで時間をかけません。理由は、開発の時間やエンジニアの体力を減らさないためです。そのため、デイリースクラムを行う際は、素早い対応が必要になります。
機能の確認・評価と改善
ひとつの機能の開発が終わったら、その機能の評価を行います。この評価のことを「スプリントレビュー」と呼びます。また、スプリントレビューは顧客などを交えながら、以下のことを話し合うのが一般的です。
- 機能は正常に動くのか
- 求めているシステムができたのか
- 開発のゴールまで正しい方向で進めているか
なお、スプリントレビューは、スプリントの最終日に実施します。スプリントレビューの結果をもとに、プロダクトオーナーによって見直されるのがプロダクトバックログです。場合によっては、開発をやり直したり機能を修正したりすることもあるでしょう。
スプリントの振り返り
スクラム開発は、スプリントと呼ばれる計画、設計、実装、テストのサイクルを何度も行います。スプリントが終了したら、そのスプリントを振り返り、次のスプリントに活かせる情報を絞り出すのが一般的です。よい点はそのまま活かして、悪い点は改善策を考えましょう。
このように都度、スプリントを振り返ることで、開発が進むにつれてよい機能を持ったシステムが生まれていきます。そうした改善のサイクルは、スクラム開発を含めたアジャイル開発の魅力だといえるでしょう。
なお、振り返りの時間は1か月のスプリントに対して3時間ほどです。スプリントの期間が短くなるほど、振り返りの時間も短くしてください。
スクラム開発を失敗させないために
スクラム開発を失敗させないためには、スクラム開発への理解を深める必要があります。これは、開発側だけではなく顧客側も同様です。
スクラム開発は仕様の変更が行われるほど、開発の期間やコストが増えるという特徴があります。顧客がそのことを知らないと、次々に無茶な仕様の変更を要求するかもしれません。
このような事態に陥ると、開発チームの負担になり開発が失敗してしまいます。失敗のリスクを減らすためにも、スクラム開発の特徴をしっかりと理解してもらうようにしましょう。
まとめ
スクラム開発は、機能ごとに3〜9人のチームを組んで開発を進める方法です。作業効率アップや仕様変更に柔軟に対応できるというメリットがありますが、プロジェクトが肥大化したり、開発の全体像を把握しづらかったりするというデメリットもあります。また、スクラム開発は、以下の流れで進めるのが一般的です。
- プロダクトバックログとスプリントバックログの作成
- 進捗の報告・共有
- 機能の確認・評価と改善
- スプリントの振り返り
開発を失敗で終わらせないためには、開発側も顧客側もスクラム開発に対する理解を深めることが重要です。
なお、テクノデジタルではスクラム開発を採用した開発も行っております。社内エンジニアのサポートも行っておりますので、スクラム開発の導入をご検討の方はぜひお問い合わせください。
投稿者
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システム開発、Webサイト制作、ECサイトの構築・運用、デジタルトランスフォーメーション(DX)など、デジタルビジネスに関わる多岐の領域において、最新のトレンド情報や実践的なノウハウを発信してまいります。
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