2023.09.29
CRM戦略の立て方を7つのステップで解説!メリットや企業事例も詳しく紹介
オンラインで商品を販売している企業が多くいる中で自社の売上を獲得するには、CRM戦略の立案が欠かせません。とくに実店舗のないEC事業者の場合、CRM戦略は顧客との関係を深めてリピーターを増やすための重要な要素となっています。
本記事では、CMR戦略を実施するメリットや立て方について紹介します。またCMR戦略を実施している企業の事例についてもピックアップ。この記事を読むことで、CRM戦略の立て方が身に付くため、すぐに実践できるようになるでしょう。マーケティング担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事でわかること
- CRM戦略の立て方
- CRM戦略のメリット
- CRM戦略の実施ポイント
目次
CRM戦略とは?
CRM戦略とは、CRM(顧客関係管理)を軸にして戦略を立案・実行するマーケティング施策のことです。「顧客関係性マネジメント」を意味する英語「Customer Relationship Management」の頭文字を取ってCRM戦略と呼ばれます。
近年では顧客のニーズが多様化しているため、顧客理解を深めることが重要です。そこでCRM戦略では顧客情報をデータ化して分析し、最適な戦略を立てていきます。
CRM戦略の目的は、顧客との関係性を深めてファンを獲得することです。リピーターが増えれば売上安定化が見込めるため、継続的な経営につながります。
関連記事:CRM施策とは?具体策や実施手順、企業事例について詳しく紹介
CRM戦略を立てるメリット3選
CRM戦略を立てることにより、以下のようなメリットを得られます。
- 顧客一人ひとりに最適なアプローチができる
- カスタマーサポートの品質を向上できる
- マーケティング戦略に活用できる
これらのメリットを理解することで、目的意識を持ってCRM戦略に取り組めるようになるでしょう。ここからは、それぞれのメリットについて解説します。
顧客一人ひとりに最適なアプローチができる
CRM戦略により、顧客一人ひとりに対して最適なアプローチができるようになります。顧客情報を可視化できるため、従来よりも精度の高い分析が可能です。
顧客ニーズは表面化しにくい部分があり、本人でさえも自覚できない場合も珍しくありません。そこで顧客分析を行なえば属性を分類でき、ターゲットの年齢層や関心度によってさまざまなアプローチができるようになります。
さらに顧客の購入履歴やWebサイト上での行動を分析することで、個人の潜在ニーズも把握できるでしょう。
ターゲットのニーズを把握できれば戦略に落とし込めるため、自社商品の興味関心を高められます。
カスタマーサポートの品質を向上できる
CRM戦略には、お問い合わせ履歴や購入履歴を確認してカスタマーサポートの品質を向上できるといったメリットがあります。
たとえば、顧客からの問い合わせデータを蓄積してデータベース化すれば、サイト内のFAQやコールセンターのFAQシステムなどに活用できます。過去の事例を参照できるので、お問い合わせ対応がスムーズになります。
迅速で丁寧な対応ができれば、顧客満足度の向上につながります。もう一度利用したいというリピーターを獲得すれば売上向上につながります。さらに評価の高いレビューが拡散されることによって、新規顧客の獲得も期待できるでしょう。
マーケティング戦略に活用できる
顧客情報を集めることで、マーケティング戦略を立てることが可能です。
従来は営業担当の経験やスキルに頼った営業方法でした。しかしそれでは担当者に一人に依存する形になり、組織全体で見ると効率的ではありません。
そこで顧客情報を分析してデータ化することで、どの層がどの商品を購入しているかを具体的に把握できるようになります。こうした顧客データは営業のみならず、商品開発にも活用できるでしょう。
さらにツールを活用すれば、対策によって得られた効果を客観的に把握できるようになります。効果測定を繰り返すことにより施策も改善されるため、より効果的なマーケティング戦略を立てられます。
7ステップで実践できるCRM戦略の立て方
CRM戦略を立てる際は、以下7つのステップで進めると効果的です。
- 目的・目標を明確にする
- KPIを決める
- ターゲットを明確にする
- カスタマージャーニーを作成する
- CRMツールを導入する
- 業務プロセスを整理する
- 施策を実施してPDCAサイクルを回す
上記の方法で戦略を立てれば、手戻りが少なく効果の高い戦略になるでしょう。ここからは、それぞれのステップについて解説します。
目的・目標を明確にする
はじめに、プロジェクトに対する目的や目標を立ててプロジェクトチームの方向性を統一します。目的や目標が曖昧だと方向性がわからなくなってしまい、非効率的になってしまうからです。
なお、目的・目標を決める際のポイントは、具体的な目標を設定することです。たとえば、
「売上を伸ばす」というざっくりした目標だとそれをどうやって実現すればいいのかが見えてきません。「リピーターの増加による売上安定化」のように、具体的に目標を決めることで実現しやすくなります。
具体的な目標を決めるには、自社で課題解決すべきことがないか、自社で達成すべきことは何かを洗い出すことが重要です。ピックアップしたものの中から、何をすべきかチームで話し合いましょう。
KPIを決める
最終的な目標や目的が決まったら、中間目標となるKPIを立てます。KPIとは「重要業績評価指標」と言い、最終目標を達成するにはどの業務をどれくらい向上させればいいのかといった指標になります。
たとえば、ECサイトの場合は以下のような指標をKPIとして設定できるでしょう。
- LTV(顧客生涯価値)
- リピート率
- 客単価
- 定期継続率
KPIを設定する際のポイントは、測定可能なものを選ぶことです。数値化できない目標を立てても達成できたかどうかがわからないため、上記のような指標を選びましょう。
もし顧客満足度を調査したいのであれば、NPSやCSIのような方法が効果的です。
NPS | CSI | |
---|---|---|
概要 | 顧客ロイヤルティを測る指標 | 顧客満足度を測定する指標 |
方法 | 顧客アンケート調査を基に数値化する | 自社商品に対する関連性が強い質問を複数行い平均を取る |
ターゲットを明確にする
費用対効果の高いCRM戦略を実施するには、あらかじめターゲットを絞り込むことが重要です。
不特定多数のユーザーに対してアプローチしても刺さりにくく、効率的にマーケティングできません。ターゲットを絞り込むことにより、商品を購入してくれる可能性が高い人にアプローチできるので効率的に顧客との関係性を深められます。
ターゲットを設定する際は、以下のような属性を設定しましょう。
- 性別
- 年齢
- 居住地
- 家族構成
- 職業
- 趣味
上記の属性を明確にすることで、ターゲットの立場や考え方をイメージできるようになります。
もし複数のターゲット層を狙いたい場合は、属性ごとにターゲットを考えるようにしましょう。ターゲットを分けることにより、属性ごとに戦略を立てられるようになります。
カスタマージャーニーを作成する
ターゲットが決定したら、カスタマージャーニーを作成します。カスタマージャーニーとは、顧客が商品を知ってから購入までのプロセスを図式化したものです。一般的には、時系列で顧客が認知・購入するタイミングや心情などを書き込んでいきます。
カスタマージャーニーを作成するメリットは、ターゲットの行動を可視化しやすくなることです。プロジェクトメンバーがターゲットに含まれていなかったとしても、マップ化することで客観視できるようになりどのような施策を実施すればいいかわかりやすくなります。
もしターゲットが商品を認知するタイミングや心情が分からない場合は、仮説を立てて完成させましょう。戦略実行後に適宜修正を加えていくことで、ターゲットの行動により近いカスタマージャーニーになります。
カスタマージャーニーが完成したら、顧客ニーズにどのように応えるのか具体的な施策を考えていきます。
CRMツールを導入する
施策を考えたら、CRMツールの選定を行います。CMRツールはKPIを正確に測定するのに必要なツールです。また顧客情報の一元管理や分析もできます。
CRMツールを選定する際のポイントは、施策に必要な機能や自社の課題を解決できるツールを選ぶことです。CRMツールの機能はさまざまなので、少なくとも施策に必要な機能が含まれているものを選びましょう。
たとえば、ツールによってはお問い合わせ管理やメール管理などの機能もあります。施策の一環でメルマガ配信を行うなら、メルマガの作成機能が必要です。
このように、最適なCRMツールを選ぶことにより、顧客分析の効率化・精度向上が期待でき、より効率的なCRM施策を実行できます。
業務プロセスを整理する
CRMツールを選定したら、実際に使用するために業務プロセスを整理していきます。
効果的なツールを導入しても、社員が管理方法や方針を理解していなければ、効果を発揮できません。CRMをどのような方向性で実施するのか、あらかじめ部署内および社員に共有することが大切です。
たとえば、CRMツールを使ったデータの収集方法や分析方法などをドキュメントにまとめていきます。また何のためにCRMツールを使用するのか運用方針をガイドラインにまとめることも必要です。
さらに、CRMツールの管理方法も共有しましょう。CRMツールによって部門間のデータを合理化できる場合があります。プロジェクトメンバー全員が適切にCRM施策を実施できる体制を整えれば、部門間の連携も効率的です。
施策を実施してPDCAサイクルを回す
CRM戦略を実行したら、定期的にKPIの数値を確認するための効果測定を行いましょう。PDCAサイクルを回すことにより、より効果的な施策になります。
場合によっては策定した施策で思ったような成果が得られなかったこともあります。そこで効果測定を行えば、CRMにおいて改善の余地があるか、またはKPIの数値設定が適切でなかったかを判断できます。
たとえば、設定したKPIに対してわずかに達成できなかった場合は、施策を改善する必要があるでしょう。一方、全くKPIを達成できなかった場合、KPIの数値設定そのものを見直さなくてはなりません。
PDCAサイクルを回すことのメリットは、効果測定のデータを蓄積することでノウハウが身につくことです。ノウハウが増えるほど戦略的な施策を立てられるようになるので、費用対効果の高い戦略を実行できます。
CMR戦略を実施するポイント
CMR戦略を成功させるポイントは2つあります。
- 検証したい施策が複数あれば優先順位を付ける
- 長期目線で実施する
これらのポイントを意識することにより、より効果的な施策になるでしょう。CMR戦略を検討しているマーケティング担当者の方は、ぜひ取り入れてみてください。
ここからは、それぞれのポイントについて解説します。
なお、CRMの成功事例については下記記事で解説していますので、こちらも合わせてお読みください。
関連記事:【手法別】CRMの成功事例10選|実施するポイントや効果についても詳しく紹介
検証したい施策が複数あれば優先順位を付ける
もし社内で検証したい施策が複数存在する場合は、優先順位を付けて実施しましょう。
人材のリソースや予算には限りがあるため、企業によっては一度に多くのCRM戦略を実施するのは厳しいです。効率的にCRM戦略を進めるには、優先度の高い施策から実施することをおすすめします。
たとえば、短期間で顧客を獲得できる施策ならすぐにKPIを達成できるため、優先すべきです。ほかにも、経費削減につながる施策など自社の予算に見合ったものなら取り急ぎ実施すべきでしょう。
このように、手当たり次第に施策に取り組むよりも、優先順位を明らかにして実施する方が効率的です。
長期目線で実施する
CRM戦略を実施する際は、長期的な目線を持つよう心がけることが重要です。顧客情報に基づく適切な施策に取り組んだからといって、すぐに成果が出るわけではありません。
CRM戦略では、顧客のリピーター獲得に向けて良好な関係を作ることが大切です。ただ、顧客との関係性はたった一回のアプローチで構築されるわけではなく、数回に渡るコミュニケーションによってようやく関係性を深められます。
どのようなコミュニケーションを取れば顧客がリピーターになるのか、長いスパンで考えていきましょう。施策を改善し続けることで、最終的には効率良く顧客を獲得できるようになります。
CRM戦略を実施した企業事例
最後に、CRM戦略を実施した企業事例を4つご紹介します。
ほかの企業がどのような戦略を立てているか、どのような取り組みをしているかを知ることで、自社での取り組みをイメージしやすくないます。類似する課題があれば施策を参考にできるでしょう。
これからCRM戦略を取り入れようと考えている担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
株式会社セブン&アイ・ホールディングス
画像引用元:株式会社セブン&アイ・ホールディングス
株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、「セブンイレブン」や「イトーヨーカドー」を傘下に持つ企業です。
課題 | 顧客情報の未連携 |
---|---|
取り組み | AWSの導入 属性に応じたクーポン配信やプロモーションを展開 |
効果 | 月平均の購買金額が1,535 円上昇 購入回数が3.2 回増加 |
同社では電子マネー「nanaco」やEC サイト「オムニ 7」など各種から会員情報を収集して活用していました。ところがこれらの情報はチャネル同士で連携できておらず、データ活用や各顧客に向けた適切なアプローチができないという課題があったのです。
そこで顧客との関係性を向上させるべく、「AWS」を導入しました。AWSとはAmazonが提供しているCRMサービスで、各チャネルにおける顧客情報の分析が可能になります。
そして顧客の属性に合わせてクーポン配信やプロモーションを展開したところ、月平均の購買金額が従来の電子マネー会員より1,535 円上昇したそうです。さらに購入回数は3.2 回上回るといった成果も出ました。
フローバル株式会社
画像引用元:フローバル株式会社
フローバル株式会社は、バルブやホースなどの配管部品を取り扱っている会社です。
課題 | 顧客への適切なアプローチ方法が分からない |
---|---|
取り組み | カスタマーリングスの導入 メール配信機能でセグメント化 |
効果 | メルマガからの売上が倍増 |
同社には「配管部品.com」というECサイトがあり、一人親方や工事業者、ガス屋などさまざまな顧客がいました。ただ顧客にどのようなアプローチが適切なのか分からないという課題があったそうです。
そこでCRMツールである「カスタマーリングス」を導入し、行動履歴や属性設定を元にセグメント化し、配信内容を属性ごとに出し分けました。
その結果、メルマガを一斉配信していた頃に比べて、メルマガからの売上が倍増したそうです。
ミズノ株式会社
画像引用元:ミズノ公式オンライン
ミズノ株式会社は「ミズノ」で知られる日本の大手総合スポーツ用品メーカーです。
課題 | ブランドイメージを統一できない |
---|---|
取り組み | Salesforce Commerce Cloudを導入 |
効果 | 共通のブランドイメージの発信やオムニチャネル対応を強化 |
同社では東南アジア諸国をはじめとし、順次全世界に向けたグローバル展開を行っています。ところが、ECサイトの運用が各国独自で行われ、ブランドイメージを統一できないという課題がありました。
そこで同社はCRMツールである「Salesforce Commerce Cloud」を導入しました。このツールにより店舗運営を支援し、EC基盤を世界で共通化でき共通のブランドイメージを発信できるようになります。
またオムニチャネル対応を強化できるようになり、顧客1人ひとりに対して適切なアプローチを行い、継続的なコミュニケーションを実現したいそうです。
サンスター株式会社
画像引用元:サンスター公式通販
サンスター株式会社はオーラルケア、ヘルスケアなどの商品を製造・販売するメーカーです。
課題 | 第三者評価の向上 マーケティング施策工数の削減 |
---|---|
取り組み | UGCの導入 |
効果 | CVR1.3倍 単月売上貢献1,000万円 |
同社には青汁「緑でサラナ」という主力商品があり、第三者評価の重要性が増していると感じていたそうです。昨今ではSNSの普及によって購入の意思決定には第三者評価が深くかかわっており、第三者評価の向上が課題になっていました。
また、プロジェクトチームの人数が少ないため、マーケティング施策工数を削減しなくてはならないという課題もあったそうです。
そこで同社では、UGCの導入に取り組みました。UGCとは「User Generated Contents)」のことで、一般ユーザーによって制作されたコンテンツのことです。近年では、InstagramやTwitterなどのSNSに投稿されたコンテンツがUGCとして活用されています。
UGCを掲載したところ、CVRは1.3倍、単月売上貢献は1,000万円にも上ったそうです。またプロジェクトチームがコンテンツを制作する必要はないので、作業工数が圧倒的に少なくなりました。
CRM戦略を実施して顧客満足度を向上させよう
CRM戦略を通じて顧客データを分析することで、顧客の行動やニーズに合わせた施策を打ち出せるようになります。
CRM戦略のポイントは、事業の目的に合わせたKPIを設定して実施することです。PDCAサイクルを回せば、より効果的な施策になります。さらにCRMツールを活用すれば、顧客情報をデータ化して他部署間で共有できるようになります。
ただし、CRM戦略は一朝一夕で結果が出るものではありません。長期的な計画を立てながら進めていきましょう。担当者の方は、ぜひこの記事でご紹介した方法を取り入れてみてください。
もしCRM戦略について不安や疑問がある方は、テクノデジタルにご相談ください。弊社では事業支援やマーケティングなどを実施しています。お客様の事業に合わせた提案ができますので、お気軽にお問い合わせください。
投稿者
-
システム開発、Webサイト制作、ECサイトの構築・運用、デジタルトランスフォーメーション(DX)など、デジタルビジネスに関わる多岐の領域において、最新のトレンド情報や実践的なノウハウを発信してまいります。
新着情報
同じカテゴリの記事
新着記事
人気の記事