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越境ECでの消費税の扱われ方|還付金を受け取る条件や注意点も詳しく解説

越境ECにおいて消費税は免税対象になり、税務署にてすでに納付したとしても還付金を受け取れます。しかし、還付金を受け取るには条件があり、満たしていないと還付金を受け取れません。また、受け取るためには、複数種類の書類を用意し、申請する必要があります。

本記事では、越境ECにおいての消費税還付を受け取れる条件や、メリットについて紹介します。本記事を読めば越境ECにおける会計処理の仕方について理解できるようになるでしょう。また越境ECにおける消費税の扱い方を網羅できますので、ぜひ参考にしてみてください。


関連記事:【徹底解説】越境ECとは?市場規模やメリット、成功するためのポイントを詳しく紹介

この記事でわかること

  • 越境ECにおける消費税還付とは
  • 越境ECにおける会計処理の仕方
  • 消費税還付で気を付けること

越境ECにおいて日本の消費税は免税となる

越境ECにおいて日本の消費税は免税となる

越境ECにおいて、日本の消費税は免税対象となっています。消費税はあくまでも日本で購入した商品・サービスに対して課されるものであり、購入者が外国人の場合は非課税になるからです。

このように販売が輸出取引であり消費税が免除されることを「輸出免税」と呼びます。輸出取引の例としては、以下のようなものがあります。

  • 日本から海外への輸出取引
  • 国際郵便や通信
  • 外国貨物の譲渡や貸付
  • 旅客機や貨物の輸送
  • 非居住者へのサービスの提供
  • 外国人向けの国内の免税店での購入

ただし、お酒やたばこなどの商品を扱っていると「酒税」や「たばこ税」が発生する可能性があるので注意が必要です。

越境ECにおいて免税を受けるには、輸出取引である証明が必要です。証拠となる書類は7年間保存することが求められています。

なお、越境ECでは消費税のほかに関税も発生します。越境ECにおける関税については以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてお読みください。

関連記事:越境ECにおける関税とは?仕組みや目的、各国の関税制度について詳しく解説

越境ECにおける消費税還付とは?

越境ECにおける消費税還付とは?

越境ECでは消費税を支払う必要がありませんが、万が一税務署に支払ってしまった場合は還付を受けることが可能です。このように支払った消費税を返金してもらう仕組みを「消費税還付」と言います。

たとえば、越境ECの場合は国内で商品を仕入れたりや発送したりするプロセスで消費税が発生します。ところが海外で商品を販売する場合は、この際発生するコストも消費税免除となるため、条件を満たせば還付金をもらうことができます。

越境ECにおいて消費税還付を受け取る条件

越境ECにおいて消費税還付を受け取る条件

越境ECにおいて消費税還付を受け取るには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

  • 消費税課税事業者である
  • 原則課税を選択している
  • 還付申請に必要な書類を提出している

これらの条件を知っていないと、消費税還付を受けることができません。越境ECを始める方は、条件に付いても理解しておきましょう。ここからは、それぞれの条件について解説していきます。

消費税課税事業者である

1つ目の条件は、消費税課税事業者であることです。消費税課税事業者とは、消費税を納付する義務がある法人や、個人事業主のことを指しています。原則として、消費税を納付する義務がありますが、越境ECで商品を売った場合は免税されています。

消費税課税事業者の定義は以下の通りです。

  • 基準期間(事業年度の前々事業年度)に課税売上高が1,000万円以上であった場合
  • 特定期間(前年の1月1日から6月30までの期間)の課税売上高が1,000万円を超えた場合
  • 新たに設立された法人の場合は資本金や出資額が1,000万円以上

これらのうちいずれかを満たしていれば消費税課税事業者と判定されます。ちなみに課税売上高は、消費税が課税される取引の売上金額や輸出取引等の免税売上金額の合計金額で算出されます。

ただし、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合でも、特定期間における給与等支払額が1,000万円以下の場合は課税事業者か免税事業者かの選択が可能です。消費税課税事業者届出書を届けることで、課税事業者になることができます。

原則課税を選択している

2つ目の条件は、原則課税を選択していることです。消費税の計算方法には「原則課税」と「簡易課税」の2種類があり、原則課税方式を選択することで免税対象になります。

原則課税 受け取った消費税額のうち支払った消費税を控除して計算
簡易課税 預かった消費税額×みなし仕入率

原則課税とは、売上や仕入れを課税と非課税に分類して集計し、売上に含まれる消費税から仕入れに含まれる消費税を差し引いた分を納付する方式のことです。

帳簿の際は、原則課税方式を選択していないと消費税の還付を受けられません。

還付申請に必要な書類を提出している

3つ目の条件は、還付申請に必要な書類を提出していることです。具体的には、以下の書類が必要になります。

  • 消費税及び地方消費税の確定申告
  • 付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書
  • 消費税の還付申告に関する明細書

上記3つの書類に加えて、消費税を支払ったことの証明として納品書や領収書などの書類も必要です。

越境ECの場合、越境ECによる還付金と国内事業の納付税額を「消費税および地方消費税の確定申告書」で一緒に申告する必要があります。消費税の還付申告に関する明細書詳細を確認したい方は、「消費税の還付申告に関する明細書(法人用)」の記載要領を確認してください。

もしこれらの書類作成が難しいと感じる場合は、税理士に依頼することも一つの手段としておすすめです。

なお、書類を税務署に提出するタイミングとしては、法人と個人で以下のように異なっています。

法人の場合 課税期間の末日の翌日から2カ月以内
個人の場合 課税期間の翌年3月末日まで

越境ECを行う事業者が消費税還付を受け取れない場合

越境ECを行う事業者が消費税還付を受け取れない場合

ここまで消費税還付を受ける条件について解説していきました。しかしその一方で、以下のうちいずれかの条件が当てはまると消費税還付を受け取れません。

  • 消費税免税事業者である
  • 簡易課税で計算している

消費税還付を受けたい方はこれらの条件に当てはまらないよう注意する必要があります。ここからは、それぞれの条件について解説します。

消費税免税事業者である

消費税の納税が免除されている「消費税免税事業者」である場合、消費税還付を受け取れません。消費税の還付を受けるには、原則課税を選択する必要があるので、消費税免税事業者には適用されません。

消費税免税事業者である条件は以下の通りです。

  • 前々事業年度(法人)の課税売上高が1,000万円以下
  • 資本金1,000万円未満の新設法人
  • 特定期間前年の1月1日から6月30までの期間で、課税売上高が1,000万円より大きいかつ、給与等支払額が1,000万円以下

上記の条件を満たしていると、国内における売上においても消費税が免税になるため、消費税還付を受け取ることができません。

もし免税事業者が課税事業者になりたい場合は、「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出することで変更できます。その場合は、課税期間初日の前日までに書類を提出しなければなりません。

ただし、2年間は免税事業者に戻ることはできません。課税事業者になるかどうかは慎重に検討する必要があります。

簡易課税で計算している

簡易課税で消費税を計算している場合は、消費税の還付を受けられません。簡易課税とは、前々事業年度の課税売上高が5000万円以下の場合に選択できる課税方式のことです。事業者は「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することで、簡易課税制度を利用できます。

簡易課税制度における計算方法は以下の通りです。

預かった消費税額ー(預かった消費税額 × みなし仕入率)

小規模事業者であれば、簡易課税によって消費税計算の負担を減らせるというメリットがありますが、消費税還付を受け取れないため要注意です。

越境ECで消費税還付の申請や受け取りで気を付けること

越境ECで消費税還付の申請や受け取りで気を付けること

越境ECの事業者が消費税還付を受け取る際は、いくつか注意点があります。具体的には、以下2つのポイントを理解しておきましょう。

  • 消費税還付はすぐに支払われない
  • 書類は必ず保管する

これらのポイントを理解することで、誤解やミスが起こりにくくなるはずです。ここからは、消費税還付に関する注意点について一つずつ解説します。

消費税還付はすぐに支払われない

消費税還付はすぐに行われるものではありません。そのため、還付金を資金として利用したい場合は、なるべく早く申請することをおすすめします。目安としては、申請をしてから2ヶ月~3ヶ月程度で受け取ることができます。

最近では還付申告の中で各取引の記入に誤りがある企業が見られます。こうした事情から、確認に時間を要するため還付金の支払いをいったん保留し、より長期化することがあるのです。

還付期間は以下の条件から選択できます。

  • 1年に1回
  • 1年に4回
  • 1年に12回

1年に1回を選ぶとより振り込まれるまでの時間がかかるので、短いスパンで還付金を受けられるようにするのも一つの手段です。

また、e-Tax(電子申告)を利用すれば比較的早く受け取ることができます。申請から早いと2週間程度で支払われるので、すぐに受け取りたい場合はe-Taxを利用するといいでしょう。

書類は必ず保管する

消費税還付に必要な書類は必ず保管しておきましょう。主に必要になる書類は以下の通りです。

  • 請求書
  • 納品書
  • 領収書
  • 輸出証明書

上記のような書類を提示することで輸出をしたことや仕入れたことを証明できます。もしこれらの書類を紛失してしまうと、輸出をしたことや仕入れたことを証明できないので、管理が大切です。

また、書類によっては発行期限が過ぎたら入手できない場合もあります。まとめて発行するのではなく、その都度発行するなど管理方法を決めておきましょう。

越境ECにおける会計処理の仕方

越境ECにおける会計処理の仕方

消費税の会計処理には「税抜経理方式」と「税込経理方式」の2つの方法があります。

それぞれで計算方法が異なり、メリットやデメリットも異なっています。そのため、消費税の還付を受けるためには、会計処理の仕方を把握して消費税を算出・記帳できるようにすることが大切です。

ここからは、それぞれの方法について解説します。

税抜経理方式

税抜経理方式とは、消費税を費用や収益とせず消費税を分けて行われる会計処理のことです。課税仕入れに対する消費税は「仮払消費税」とし、借方に未収消費税として計上します。

仕入時 仕入(税抜) 2,000 / 現金  2,200
仮払消費税   200
販売時 現金  3,300 / 売上 3,000(税抜)
仮受消費税 300
決算時 仮受消費税 300 / 仮払消費税 200
未払消費税 100
納付時 未払消費税 100 / 現金 100

確定申告で計算した還付の金額と、仮受消費税との差額に端数処理が発生して一致しない場合は、雑収入や租税公課により調整する必要があります。

還付金を受け取れば、未収消費税を減少させることが可能です。

税込経理方式

税込経理方式とは、消費税を費用や収益とみなす会計処理のことです。確定申告で当期計上の場合に、未収消費税として計上します。

仕入時 仕入 2,200(税込)/現金 2,200
販売時 現金 3,300 /売上 3,300(税込)
決算時 租税公課 100 /未払消費税 100
納付時 未払消費税 100 / 現金 100

端数による不一致はなく、還付金を受け取ったあとは未収消費税を減少させることが可能です。

税込経理方式のメリットは、税率の改正が行われた際に修正しやすいことです。また期末時点で把握している利益と大きな違いがないので、支払う税金を準備しやすいといった特徴があります。

越境ECを始めたら消費税還付を申請してみよう

越境ECを始めたら消費税還付を申請してみよう

越境ECにおいては消費税の支払いが免除されています。とはいえ、商品の支払いや仕入れで消費税を支払っているため、条件を満たすことで消費税の還付を受けることが可能です。ただし消費税の還付は時間がかかるため、予算に組み込みたい場合は早めに申請することをおすすめします。

申請の際はいくつか書類が必要になります。請求書など、輸出の証拠となる書類を失くしてしまうと提出できなくなるため、大切に保管しておきましょう。

もし越境ECについて悩みや課題がある場合は、テクノデジタルにご相談ください。弊社ではECサイトの制作からマーケティング立案が可能です。お客様の事業に合わせたソリューション提案をいたしますので、ぜひご連絡ください。

投稿者

  • デジタルトレンドナビ編集部

    システム開発、Webサイト制作、ECサイトの構築・運用、デジタルトランスフォーメーション(DX)など、デジタルビジネスに関わる多岐の領域において、最新のトレンド情報や実践的なノウハウを発信してまいります。