2024.06.21
カラーマネジメントモニターはいらない?プロとアマチュアの視点から解説
パソコン用のディスプレイと一口に言っても、さまざまな種類があり、それぞれに見え方が異なっていることを知っていますか?
デジタル画像の世界では、「カラーマネジメントモニター」が重要な役割を果たします。
しかし、本当にすべての人に必要なのでしょうか?
本記事ではプロとアマチュアの視点から、カラーマネジメントモニターの必要性を掘り下げます。
この記事でわかること
- モニターの色域
- カラーマネジメントモニターの必要性
- カラーマネジメントモニターのメリット・デメリット
- カラーマネジメントモニターの正しい選び方
目次
カラーマネジメントモニターとは?
パソコン画面はカラフルな映像を映し出していますよね。
しかし、それぞれのモデルによって色の表現には差があるものです。この色のズレを修正するためには「キャリブレーション」というプロセスが必要で、これは画面の色合いを定期的に調整して、正確な色を保つためのものです。
たとえば、オフィスで使われているモニターにおいても、種類によっては色が黄色く見えたり、逆に青みがかって見えたりすることがあります。特にデザインやイラストレーションの仕事をする人々にとっては、色の正確さは非常に重要で、安価なモニターでは本来の色を再現できないという意見もよく耳にします。
モニターの色域とは?
色域は、モニターが表示できる色の範囲を指します。一般的なモニターよりも広い色域を持つことで、より広範な色を正確に表示することができます。
パソコンやテレビの画面で色を作る際には、「RGB」という色の表現方法が使われており、これは赤、緑、青の三原色の光を混ぜて色を表現します。
一方で、印刷には「CMYK」という色空間が用いられ、シアン、マゼンタ、イエロー、そしてブラックの4種類のインクを組み合わせて色を定めます。
イラスト作成者が作品を印刷する際にRGBからCMYKへの変換を行うと、色の違いが顕著になることがしばしばあり、その結果、色が飛んだり変わったりしてしまいます。
“正しい色”とは?
「カラーマネジメント」とは、直訳すると「色彩の統制」を指す言葉です。特に写真業界においては、この用語はパソコンのディスプレイの色や輝度を適切に調整する行為を指します。
写真を撮ったあとでパソコンに取り込み、それを見たり編集したりする際に、モニターの設定がデフォルト状態では正確な色を再現できないことが多いです。
では「正しい色」とは何かというと、それは業界基準によって決められた色のことを言います。
sRGBという色空間を定めたIEC(国際電気標準会議)や、AdobeRGBという色空間を設定したアメリカのアドビ システムズ社があります。
これらの基準に沿って特定の色、例えば「真っ赤」は、画面では「この色」でなければならないと規定されています。
たとえば「真っ赤」の色は、RGBコードでは赤=255、緑=0、青=0となり、16進数では#ff0000と表されます。これらはどちらも「Pure_Red」と呼ばれる同一の色を示しています。
ここで問題となるのが、皆さんが普段使っているパソコンやスマートフォンで見ている色が、IECやアドビ システムズ社が定める色とは異なる可能性があるという点です。
ディスプレイにはそれぞれ固有の特性があり、そのために本来の色とは異なる色表示になってしまうことがあります。
これは、製造時に意図的に色を調整して、商品としての魅力を高めるための措置が取られている場合もあります。
カラーマネジメントモニターはいる?いらない?
モニターの色域や正しい色を考えると、写真家やグラフィックデザイナーなど、色の正確さが求められる専門職の方には、カラーマネジメントモニターは必須のツールと言えます。
色彩管理を無視することで、最終的な作品に予期せぬ色の違いが生じるリスクもあります。
特に印刷を伴う作業では、モニターと印刷物の色が一致しないという問題が発生する可能性がありますので、カラーマネジメントモニターは必要です。
一方で、趣味として写真や動画を楽しむ程度であれば、高価なカラーマネジメントモニターは必ずしも必要ではありません。
カラーマネジメントモニターが不要と言われる理由
カラーマネジメントモニターが不要とされる主な理由は以下のとおりです。
- 一般ユーザーの用途: 日常的なオフィス作業やウェブ閲覧、動画視聴などの一般的な用途では、色の精度が仕事の質に直接影響しないため、高価なカラーマネジメントモニターは必要ないと考えられます。
- コストパフォーマンス: カラーマネジメントモニターは一般のモニターに比べて高価です。色の正確性に対するニーズが低いユーザーにとっては、そのコストを正当化するだけの価値はないと見なされることがあります。
- プロフェッショナルでない作業: プロフェッショナルな写真編集やグラフィックデザインなどの色精度が求められる作業をしていない場合、カラーマネジメントモニターに投資する必要はありません。
- 環境の制約: 印刷や他のメディアに出力する作業がない、または色のわずかな違いが許容される環境では、カラーマネジメントモニターの精度は過剰となり得ます。
- 技術の進歩: 一般のモニターも技術の向上により色再現性が改善されており、一般的な用途においては十分な品質を提供できるようになっています。
これらの理由から、カラーマネジメントモニターが必ずしも必要ではないとされることがあります。ニーズに合わせて適切なモニターを選択することが大切です。
カラーマネジメント事例(同一のPSDファイルを比較した事例)
PaintTool SAIやAdobeのPhotoshop、Illustratorを使い、絵を書いたところ、
「もうちょっと鮮やかにしたい」「床の色飛んでない?」などの声が上がりました。
仕上げで使ったPhotoshopで見てみても特に異常は無く、SAIで開き確認すると
もともと暗いトーンの絵だったのですが、全体に煤けたような、上に白のレイヤーを不透明度20%くらいでかぶせたような色になっていることが発覚しました。
上の画像(Photoshopで見た画像)のほうが若干彩度が高く、下の画像(SAIで見た画像)は少し薄く、明るめになっていますね。
※上がPhotoshopで見たもの、下がSAIで見たもの。
カラーマネジメント事例(原因と解決策)
では、カラーマネジメントがどのように色変化の原因となるのかというと、コンピュータは色を「RGB」で#FFFFFFから#000000までの色コードで表しますが、特定の色コードが意味する正確な色合いをディスプレイに示す具体的な規定は存在しません。
この色の具現化をOSやアプリケーションが担うことが、カラーマネジメントの役割です。
例えば、同一のモニターであっても、MacとWindowsでは同じ画像が異なる色合いで表示されることがあります。Macはカラーマネジメントがデフォルトでしっかりしているのに対し、以前のWindows XPではその機能が甚だしく不完全でした。
この違いが生じるのは、例えばSAIのようなソフトウェアはカラーマネジメント機能を内蔵していないため、OSに設定された「sRGB」というプロファイルを採用しているからです。
一方で、AdobeのPhotoshopは「AdobeRGB」という独自のプロファイルを使用しており、これはsRGBよりも彩度が高く設定されていて、写真のレタッチ用ソフトとしての特性上、写真をより鮮やかに見せるためにこのプロファイルが使われています。これにより、sRGBでは表現できない微妙な色合いも再現可能です。
この違いを理解せずにSAIとPhotoshopを行き来して作業をすると、予期せぬ色の変化に悩まされ、色調整を繰り返し、結果的にグラデーションにモアレが出てしまい、塗り直しを余儀なくされることがあります。
結局のところ、Adobeの「鮮やかすぎる発色」で保存されたPSDファイルを、クライアントがGIMPなどの「通常の発色」であるsRGB設定で見たところ、本来の色よりも暗く見えてしまい、イラストがくすんで見えてしまったわけです。
カラーマネジメントモニターのメリットとデメリット
カラーマネジメントモニターのメリットとしては、色を正確に再現することで作品の品質を向上させることができます。
特に印刷物においては、色の正確さが重要になるので、カラーマネジメントモニターでの確認は必須と言えるでしょう。
逆に、デメリットとしては、普通のモニターより価格が高いことです。カラーマネジメントモニターは一般的なモニターよりも高価なので予算や使用目的に応じて、適切な選択が求められます。
カラーマネジメントモニターの選び方
予算内で最高の性能を持つモニターを選ぶには、①色域、②解像度、③キャリブレーションの容易さなどを考慮する必要があります。 モニター選びで大切なポイントは以下です。
- サイズ
- 解像度
- 色域(sRGBやAdobeRGBのカバー率)
- パネルの種類(IPSやVA)
- 階調(8bitや10bit)
- ハードウェアキャリブレーションが可能か
- 端子が使用するパソコンと合うか(HDMIやDisplayPort)
- メーカー保証
- 各商品オリジナルの特徴
- 価格
ご自身が必要とする機能を明確にし、価格とのバランスを見極めましょう!
まとめ
カラーマネジメントモニターは、色の正確性を重視するプロフェッショナルのために設計されています。
これは、写真家、グラフィックデザイナー、映像編集者など、色彩の一貫性と精度が求められる業界で重宝されます。これらのモニターは、色域の広さ、色の再現性、均一性、明るさ、コントラスト比など、色に関連するさまざまな仕様が高水準であることが特徴です。
しかし、カラーマネジメントモニターの高い性能と精度は、それに見合った価格が伴うため、一般的な使用目的であれば必要以上の投資となることもあります。
色の正確さが極めて重要な専門職の場合には、その投資の価値があると言えるでしょう。カラーマネジメントモニターを通じて、作品の色彩を意図した通りに表現し、最終的な出力物においても色の予測可能性を高めることができます。
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システム開発、Webサイト制作、ECサイトの構築・運用、デジタルトランスフォーメーション(DX)など、デジタルビジネスに関わる多岐の領域において、最新のトレンド情報や実践的なノウハウを発信してまいります。
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