2023.12.28
要件定義とは?流れや求められるスキルと作成時のポイント
システム開発の現場では「要件定義」と呼ばれる言葉を聞く機会が多くあります。要件定義とはシステム開発において、作業の目的や流れを確認するうえで重要です。
しかし「要件定義について具体的に知りたい」「なぜ重要なのか」といった疑問に思う方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、要件定義の重要性や作成時に押さえるべきポイント、必要なスキルについて解説します。
要件定義に関する知識を深めることで、システムの品質向上にもつながるので、ぜひご覧ください。
この記事でわかること
- 要件定義の重要性について
- 要件定義が完成するまでの流れ
- 要件定義の作成に求められるスキル
目次
要件定義とは
要件定義とは、システム開発の前段階にあたるもので、システム開発の目的を明確化するための作業です。
システム開発は、ユーザーからの要求を実現することが目的であり、要求をもとにシステムに組み込む機能や性能を要件定義に盛り込みます。その後、どのように開発を進めていくか計画することも作業の一環です。
要件定義を作るにあたって、まずはユーザーから要望を聞き、内容を整理します。整理した内容をもとに業務のフローや計画を作成し、開発工程を詳細に設計します。
要件定義の重要性
要件定義はシステム開発の序盤に行われる工程で、内容次第ではシステムのクオリティに影響を及ぼすポジションです。要件定義が不十分なままでは、以下のような事態を招いてしまいます。
- 計画段階とは異なるシステムが出来上がってしまう
- 予算内に収められない
- スケジュールの大幅な遅れ
- 納期に間に合わない
上記で挙げたトラブルが予想されるほか、完成後にユーザーから別の機能を実装して欲しいといった要望を受けることもあります。このような事態となった場合、開発し直すことも想定しなければなりません。 トラブルをできるだけ起こさず、納期に間に合わせられるよう、要件定義の作成段階で密に打ち合わせを行うことが重要です。ユーザーのニーズをすべて洗い出したうえで開発を進めると、想定外のトラブルに見舞われるリスクを抑えられるでしょう。
要件定義と要求定義の違い
要件定義と似ている言葉に「要求定義」と言われるものがあります。要求定義とは、要件定義の前段階でユーザーからの要望を整理する工程です。
システムの導入によって解決したい課題や導入の目的などを整理し、要件定義に落とし込みます。落とし込んだ内容を参考に必要な予算やスケジュールを作成し、進め方を決めていきます。
予算やスケジュールによっては、すべての要求を取り入れることが難しいケースもあるため、ユーザーが本当に必要としているものを絞り込むことも重要です。
要件定義の流れ
要件定義が完成するまでの流れは、以下のとおりです。
- クライアントからのヒアリング
- 要求の整理・分析
- 要件定義書の作成
上記の流れを把握したうえで、「システム開発に適した要件定義の作成を心がけましょう。以下で、詳しく解説します。
Step1.クライアントからのヒアリング
要件定義を行う際にまず行われる作業が、クライアント(ユーザー)とのヒアリングです。ヒアリングでは現状の課題や、課題を解決した後に実現したいことを聞き出します。その後、ヒアリングから得た情報をもとに、現状把握とシステム開発の目的を明確にします。 ユーザーから聞き出した情報だけがすべてではないケースもあるため、ほかに要望がないか開発側から質問をして洗い出すことも重要です。 ヒアリングでの注意点は、ユーザーの言いなりにならないことです。ユーザーからの要望が実現できるものかを精査したうえで、スケジュールを作成します。
Step2.要求の整理・分析
ヒアリングを通して要求を明確化した後は、要求が実現可能なものか整理します。ヒアリングではさまざまな要求が出てきがちですが、予算やスケジュールの関係上すべて実現できない場合もあるでしょう。その場合は、どの要求を優先させたいかを話し合うと、要件定義の作成もスムーズに進みます。 システム開発の要件には「必須要件」と「希望要件」の2種類があります。必須要件とは、必ず実現させたい要件を指し、希望要件とは必須ではないが、できれば実現させたい要件です。ユーザーからの要求をそれぞれに分けることで、ユーザーの希望にマッチしたシステムを開発できるでしょう。
Step3.要件定義書の作成
要求内容の整理や分析が完了した後は、要件定義書の作成に移ります。要件定義書を作成する際はドキュメントを使用すると、システム開発に携わるメンバーに共有しやすいでしょう。 要件定義書の作成にあたっては、以下の項目を盛り込みます。
- 概要・構想:システム開発に関する全体的な概要と仕上がりなどについて説明する
- ユーザーからの要求と必須要件:ユーザーからの要求と開発側から提案した必須要件(機能要件・非機能要件)を記載
- 目的や目標:システム導入の目的やメリットを記載し、イメージを共有しやすくする
要件定義書を作成する際、要望を実現するために必要なシステムの全体像や機能の詳細など、整理した内容をすべて記載することをおすすめします。 要件定義書は、開発側だけではなくユーザー側も確認するものです。そのため、開発に関する知識やノウハウを持っていない人でも理解できるように作成することが大切です。
こちらの記事では、要件定義書に書くべき重要項目である機能要件について解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
要件定義書作成のポイント
要件定義書を作成するポイントは、以下の3点です。
- 5W2Hを明確にする
- 専門知識がない相手にもわかりやすく書く
- 現行の仕様を把握する
上記の内容を正しく把握するために、以下で詳しく解説します。
5W2Hを明確にする
ユーザーからの要求を正確に聞き出す際「5W2H」を意識することでヒアリングの精度向上が期待できます。
ヒアリングの内容に抜け漏れがないよう、以下の観点に注意する必要があります。
- When:システム開発の期間はいつまでか?
- Where:開発範囲はどこまでか?
- What:現状の課題や改善、実現したいポイントは何か?
- Why:なぜシステム化が必要なのか?必要となる目的や背景は何か?
- Who:システムの利用者は誰か?
- How:要件を実現する方法は?
- How much:システム開発に必要な費用は?
ヒアリングに参加する人は、全員IT知識を持っているとは限りません。そのため、専門用語をできる限り使用せず、誰でも理解できるレベルまで噛み砕いて説明することが大切です。サンプルや図を用いることも有効な手段です。
専門知識がない相手にもわかりやすく書く
ヒアリング同様、要件定義書を読む人全員がITに関する知識を持っているとは限りません。ITの知識が少ない人が読むと、認識にズレが生じる可能性が高くなります。
認識が一致しないままシステム開発を進めてしまうと、ユーザーが当初想定していたものとは違うシステムが出来上がってしまう場合もあるでしょう。
重大なトラブルが発生しないためにも、要件定義書を作成する際は、読んだ人全員が同じイメージを抱ける状態に仕上げる必要があります。そのためには、知識の差に関係なく誰でも理解できるような内容を心がけることが重要です。
現行の仕様を把握する
システム開発を行う目的の多くは、現在運用しているシステムが抱える課題の解決がほとんどです。課題を解決したシステムを開発するためには、現行システムの業務フローなどの確認が必要です。
現行システムを利用しているケースのなかには、ユーザーが設計書どおりに扱っていないこともあります。そのため、システムの開発者や保守担当者へのヒアリングが必要な場合もあるでしょう。
入念に調査を行うことで、現行システムに不足している点や改善すべき点の洗い出しが可能となり、より完成度の高いシステムの開発ができるようになります。 それにより、ユーザーが実際に求める機能を的確に反映させることが可能です。
要件定義に必要なスキル
精度の高い要件定義を行うためには、以下の4つのスキルが必要です。
- ITに関するスキル
- コミュニケーションスキル
- スケジュール・作業フロー管理スキル
- ドキュメント作成スキル
上記のスキルを把握し、要件定義に活かせるよう以下で解説します。
ITに関するスキル
要件定義を進めていくには、ユーザーからの要求をシステムに落とし込んだ際の動きや、ユーザーがオペレーションした際のイメージを具体的に描く必要があります。ITに関する知識やスキルを保有している場合、ユーザーからの要求が実現できるか判断が可能です。
ITに関する知識やスキルは、開発側だけでなくユーザー側にも必要です。お互いがITスキルを持ち合わせていることで、ヒアリングがスムーズに進むほか、システムに導入すべき要求を正しく把握できます。
開発段階やシステムを実装した後のトラブルをできるだけ防止するためにも、ある程度の知識やスキルは持ち合わせておくと良いでしょう。
コミュニケーションスキル
ユーザーからさまざまな要求を引き出すためには、コミュニケーションスキルが必要です。十分にコミュニケーションが取れない場合、以下のような事態が起こることも考えられます。
- 本来システムに導入すべき機能が搭載されていない
- 認識のズレが生じたままシステムを開発してしまう
ヒアリングにてユーザーの意図に寄り添って求めているものを引き出せるよう、コミュニケーションスキルの習得は不可欠です。
スケジュール・作業フロー管理スキル
ユーザーのニーズに応えるためにも、慎重に要件定義を進める必要があります。しかし、作成に時間がかかり過ぎてしまうと、後工程に影響を及ぼしかねません。計画どおりに要件定義を進めるためにも、プロジェクトの進行を管理するスキルが必要です。
スケジュール管理のほかにも、ユーザーが希望するシステムの導入や予算などを検討するといったスキルも重要です。要件定義がしっかり行われることで、下流工程でもトラブルを防ぎながらスムーズに作業を進められます。
ドキュメント作成スキル
プロジェクトに携わるメンバーや作業を行う人が同じ認識になれるよう、ドキュメントの作成スキルは重要です。ドキュメントと一言で言っても、設計書やシステムのマニュアル、報告書などさまざまです。
読む相手によって認識が変わるドキュメントを作成してしまうと、想定外のミスやトラブルにつながってしまいます。また、システムが稼働した後のメンテナンスや仕様変更の際にも活用されるため、誰が読んでも同じ解釈ができるよう注意が必要です。
まとめ
要件定義とは、システム開発の前工程に当たる部分で、システム開発の目的を明確化するための作業です。ユーザーのニーズを実現することがシステム開発の目的のひとつであるため、ユーザーが希望する機能や性能を要件定義にまとめます。
要件定義を作成するためには、ITに関する知識を持っていることはもちろん、ユーザーからの要求をすべて引き出すためのコミュニケーションスキルが必要です。
そのほか、納期に間に合わせるためのスケジュール管理や、誰が読んでも共通の認識ができるドキュメントを作成するスキルも求められます。要件定義を作成する際は、担当者に必要なスキルが備わっているか確認が大切です。
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システム開発、Webサイト制作、ECサイトの構築・運用、デジタルトランスフォーメーション(DX)など、デジタルビジネスに関わる多岐の領域において、最新のトレンド情報や実践的なノウハウを発信してまいります。
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