2023.10.12
ニアショア開発とは?オフショアとの違いと実践的なメリット・デメリットを解説
ニアショア開発は、国内でシステム開発や運用保守などを依頼する手法のひとつです。主に、自社の近隣の企業や地方企業、テレワークの浸透による在宅エンジニアなどに依頼することが多いです。
今回は、ニアショア開発について詳しく解説するとともに、オフショア開発との違いやメリットやデメリットにフォーカスして紹介していきます。
この記事でわかること
- ニアショア開発とは
- ニアショア開発のメリット
- ニアショア開発のデメリット
- ニアショア開発を依頼する際のコツ
目次
ニアショア開発とは
二アショア開発とは、システム開発などを国内で外注することを指します。主に、都市部の企業が、近隣もしくは地方の企業に委託することが多いです。場合によっては、在宅エンジニアに依頼することもあります。
海外に依頼するオフショア開発に比べて、文化や言葉などの課題が少なく、コスト削減が期待できることが特徴です。また、システム開発・運用・保守における、そのほかの課題を解決する手段としても注目を集めています。
ニアショア開発とオフショア開発との違い
国内で開発を依頼するニアショア開発と似た言葉に、オフショア開発が挙げられます。オフショア開発は、海外に開発を依頼する手法であり、比較的人件費を抑えられる国を選んで依頼する傾向があります。
オフショア開発(offshore development)とは、コスト削減やグローバル人材の活用を目的とし、海外の企業や現地法人にソフトウェア、アプリ、WEBシステムの開発や、それらの運用・保守業務を委託する開発手法です。
引用:オフショア開発.com|オフショア開発とは?意味やメリット、成功の秘訣を解説
ただ、オフショア開発は、コストを抑えるという点ではメリットが大きいものの、依頼する国の文化や母国語に対応できるかが課題となります。十分な連携が取れない場合は、開発に支障をきたすおそれもあるでしょう。
対してニアショア開発は、国内でやり取りできることや、依頼先のエンジニアが外国人だったとしてもある程度のコミュニケーションが取れるなど、プロジェクトの進行の妨げとなりえる課題が少ないといえます。
納品物のクオリティーも期待できるなど、国内ならではのメリットがあります。
ニアショア開発のメリット
国内で開発の外注をするニアショア開発は、コスト削減や連携しやすさのほかにもメリットがあります。どんなメリットがあるのかチェックしていきましょう。
開発コストを削減できる
開発費用に含まれる費用のうち、大半を占めるのが人件費です。パソコンなど、物理的なものに費用がかかるイメージの方も多いかと思いますが、国内の人材不足の影響もあり、優秀なエンジニアを求めるほど単価が高くなる傾向があります。
人件費は地域によっても変動するので、低単価で委託できる地方に依頼することで、総コストの低減が期待できます。単価の目安として、都道府県別の最低賃金を参考にしたり、複数の地域や企業の単価を比較検討したりすることもあります。
コミュニケーションが取りやすい
国内で開発を依頼することから、依頼先には、日本人もしくは日本語に精通した外国人がいる可能性があります。そのため、言葉や文化の違いを気にすることなく、コミュニケーションをとれるメリットがあります。
また、通訳を介する必要性もなく、円滑にやり取りを進められることも挙げられるでしょう。加えて、近年ではオンラインでの対面型会議も普及していることから、依頼先が地方であったとしても、意思疎通の問題が軽減できるといえます。
こうした観点からも、近年ではニアショア開発に適した環境が整いつつあると解釈できます。
災害時のリスクを分散できる
日本は、台風や地震などの自然災害の影響を受けやすいため、災害が発生した際はプロジェクトはもちろん、企業としての活動も停止する可能性があります。とくに都心部に被害が出たときは、致命的なダメージになることでしょう。
こうした万が一のことを考えると、ニアショア開発により国内に複数の拠点を持ち、プロジェクトを進めることで、災害を免れた地域では進行を止めずに済みます。多少なりとも拠点の所在地に左右はされますが、すべての企業活動が停止する状況を回避できるでしょう。
どんな事態となっても滞ることなくプロジェクトを進めたい場合は、依頼先を遠方にするなど、なるべく1か所に偏らないようエリアを選定することも必要です。
地方の活性化につながる
都市部の企業が、地方の企業や拠点に開発を依頼することで、地方の活性化につながることもメリットのひとつです。地方では、開発に携わる人材を確保するために、IT人材の育成に力を注ぎ、自治体や大学などでも各分野の教育に尽力するようになるでしょう。
また、依頼が増えれば、それだけ人材が多く地方に集まることになります。転勤などで移住者が増えれば、飲食店などをはじめ、地域全体が活気づくことも予想できます。こうしたことから、ニアショア開発は持続可能な地域社会の発展にも貢献する手段なのです。
ニアショア開発のデメリット
ニアショア開発は、企業のみならず地方へも多くのメリットをもたらしますが、注意しておきたい点やデメリットもあります。実際に導入する前に双方を理解して、自社に本当に適した手法かを判断しましょう。
再委託される可能性がある
開発を依頼した企業内で、適切な人材を揃えられない場合や、依頼に見合った技術力がない場合、依頼先が別の下請けに再委託する可能性もあるでしょう。
仮に、業務の一部だけを再委託したとしても修正対応に遅れが生じたり、業務に対する認識にズレがあったりと、後々業務に支障が出ることも想定できます。
このような事態を避けるには、契約時に再委託を禁止する内容を盛り込み、契約内容のすり合わせを入念にすることが必要です。
最新技術に疎い可能性がある
依頼する企業の人材に、どの程度の技術や知識があるかは、実際に作業をしてみないとわからない部分があります。求める技術や知識がない場合もあるでしょう。
また、システム開発は日々進んでいく、変化の早い業界です。もしも、最新技術を駆使した開発を求める場合は、対応できない場合も考えられます。
エンジニアのスキルを事前に図ることは難しいことですが、事前にその企業の実績を見て、求める技術力があるか、最新技術にも対応できるか確認しておきましょう。
エンジニアの確保が難しい
ニアショア開発は、都市部よりもエンジニアを確保しやすいというメリットがある一方で、エンジニアの数が少ない地方に依頼した場合は、思うように人材を確保できないこともあるでしょう。
地方は都心に比べて人口が少なく、必然的にエンジニア人口そのものが少ない可能性があること、エンジニアのスキル不足やばらつきがあることを考えると、プロジェクトによっては、ニアショア開発の依頼先に適さないこともあります。
発注先を選定するのが難しい
どんなにニアショア開発の需要があっても、発注できる企業が見つからない、もしくは選定するのが難しいケースはあります。
同じシステム開発を手掛ける企業でも、エンジニアのスキルや人数、どれほどの実績があるかなど、発注先としてふさわしい企業かの判断は、なかなか難しいものです。
また、発注したい企業が見つかったとしても、すでに複数の案件を抱えていて、これ以上は受注できないケースもあるでしょう。地方でも、実績や技術力がある企業は人気が高まり、多くの企業が依頼することも含めると、発注先の選定はますます厳しいものになります。
どの地域に拠点を置くとしても、依頼を検討する際は、事前に複数の候補企業をピックアップして、情報収集することをおすすめします。
ニアショア開発の単価と流れ
ニアショア開発では、エンジニアの単価によりコストは変動します。とはいえ、地域により単価は異なるため、地域差が出ることでしょう。
ここでは、地域別のエンジニア単価とニアショア開発をする際の流れを紹介します。導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
単価
ニアショア開発の魅力は、なんといってもコスト削減ができる点です。具体的には、人件費の削減になります。開発における人件費では、エンジニアの単価が重要です。
地域別に、エンジニアの年収から大まかな単価を計算してみました。はじめに、主要都市の年収から見ていきましょう。
- 東京都:496.6万円
- 神奈川県:492.0万円
- 兵庫県:438.9万円
- 愛知県:428.7万円
- 大阪府:425.6万円
東京都は年収も高く、次いで神奈川県、兵庫県と、関東圏・関西圏の年収が高いことがわかります。月あたりは、東京では41.3万円、神奈川県では41.0万円の給料額です。続いて、そのほかの地方の年収をチェックしていきましょう。
- 山形県:356.7万円
- 新潟県:345.0万円
- 大分県:311.7万円
- 山口県:300.0万円
- 秋田県:296.7万円
地方になると年収300万円を切る地域もあり、東京都と秋田県では200万円近い年収差があることがわかります。月あたり、山形県では29.7万円、秋田県では24.7万円の給料額です。
東京都と山形県では10万円ほど、秋田県とは15万円ほどの差があります。これを単純に人件費として見た場合、東京の企業が山形県の企業に依頼すれば毎月10万円ほど、秋田県なら15万円ほどのコスト削減につながるわけです。
流れ
ニアショア開発は、次のような流れで進められます。
- 要件定義
- 内部設計
- プログラミング
- テスト
- 保守運用
はじめに要件定義の時点で、どの部分をニアショア開発として依頼するのかを決定します。その内容に基づき、設計・内部のプログラミングの設計などを行い、実際にプログラムを作成します。
その後はテストを行います。プログラムの正常作動やほかのプログラムとの連携などを確認し、実際に利用する環境下でも運用できるか、テストが繰り返されるのが一般的な流れです。
運用を開始したあとでも、定期的な管理やアップデートなどが行われ、システムによっては、操作性やセキュリティ面なども強化されます。
ニアショア開発を依頼する際のコツ
ニアショア開発を依頼する際は、さまざまな角度から依頼先を選定し、自社のプロジェクトに適合する企業を選ばなければなりません。
ただし、その際にはいくつかのポイントを押さえた選び方が必要です。ここでは、開発を依頼する際のコツを紹介するので、ぜひ活用してください。
開発スタイルを決める
ニアショア開発は、2つの開発スタイルに分けることができます。ひとつめは、地方に拠点を置く企業に、開発をすべて任せる方法です。作業は地方で行われ、現場を確認する際は、オンラインか現地に出向く必要があります。
2つめは、都市部の本社や地方に別の拠点を設けて、開発プロセスを分業する方法です。この場合は、開発のどの工程をどの拠点で行うかなどのように、分担する内容が異なることが特徴です。
どちらのスタイルにするかは、企業や内容により選択できるものの、ある程度現場の様子を確認したい場合は、足を運びやすい方を選択するとよいでしょう。
目的や優先順位を明確にする
ニアショア開発を導入するにあたり、何を優先するかは大事な要素です。優先すべきものとして、コストや人材確保など、企業によりさまざまな要素があります。これらを明確にすることで、ニアショア開発の進捗もスムーズになります。
企業によってはオフショア開発から撤退してニアショア開発に切り替えるところもあるでしょう。その場合は円滑なコミュニケーションを重視していると考えられますし、コスト面は多少余裕があるか最優先項目ではないとも解釈できます。
優先順位や目的を明確にして取り入れる手法を選択することが大切です。
十分に比較検討して依頼先を決めよう
ニアショア開発で最も魅力的なのは、コストを削減できることです。コストのなかでも人件費の削減が期待でき、自社の開発に見合う技術力があれば、なお理想的な業務遂行ができるでしょう。
ただ、場合によっては思うような人材が見つからない場合や、人材が確保できたとしても思うようなコスト削減に至らないケースもあります。こうしたリスクも踏まえ、発注先を探す際は、先方の得意分野やリソースをよく調べて、見極めることが大切です。
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