2023.09.29
EC物流の流れや特徴を解説|よくある課題と解決方法についても詳しく紹介
EC事業者において物流は、顧客満足度や利益の向上に大きく関わる業務です。EC市場が発展している現在において顧客の注文通りの商品を用意し、指定された時間に運ぶことが最低限の物流機能として求められています。しかし、EC物流は多岐にわたる業務があり、自社の物流部門をうまく機能させるには物流に関してさまざまな知識を把握しておくことが重要です。
本記事ではEC物流について流れや特徴、よくある課題について詳しく紹介します。課題解決方法も把握できるので、コスト最適化やリードタイム短縮を意識した物流の構築をしたいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
この記事でわかること
- EC物流の流れ
- EC物流の特徴
- EC物流に関する課題・解決方法
EC物流とは?
EC物流とは、電子商取引における商品の仕入れからユーザーに配送するまでの一連の流れのことです。EC事業を運営している場合、その物流システムは「EC物流」と呼ばれます。
EC物流ではインターネットでユーザーから受注が入り、注文内容をもとに倉庫から商品を取り出し、検品や箱詰めをして配送します。
なお、EC物流に関わる業務は商品の物理的な移動に関する業務だけではありません。商品の倉庫管理や、商品の情報管理などもEC物流に含まれています。
EC物流の流れ
EC物流を始めるには、全体の流れを理解することが必須です。EC物流の大きな流れは以下の通りです。
- 入荷
- 保管・管理
- ピッキング・流通加工
- 出荷
これらの各工程の作業内容を理解すれば、よりEC物流のイメージが深まるでしょう。ここからはユーザーにどのような流れで商品が届くかについて、ステップごとに紹介していきます。
入荷
ECサイトを始めるには、自社サイトが取り扱っている商品を仕入れるために商品を入荷します。
商品を入荷する際のポイントは、ケース数の間違いや棚入れのミスなどに注意することです。特にコスメやアパレルなど商品の種類が多い場合は商材が複雑になるため、ミスが発生しやすくなります。
そこで、ミスを防止するには商品入荷時の検品が必須です。商品の数や商品の汚れ、破損などの確認をし、納品書通りのものが届いているかをチェックしていきます。問題がなければ、倉庫に商品を保管する入庫作業を実施します。
保管・管理
商品を入荷したら、決められた場所に商品を保管します。商品の保管や倉庫内の管理の工程は、商品の品質を維持したり、在庫を最適化したりするために行います。
たとえば、食品の場合は温度調整や賞味期限の管理などが必要です。管理方法は商品ごとに異なり、商材の性質に最適な保管環境が求められます。
さらに商品の場所がどこにあるかを把握するために、ロケーション管理の実施も必要です。ロケーション管理では、倉庫の保管効率を高めるための工夫が求められます。色や大きさ、種類に応じて商品をピッキングできるようになれば、作業時間の短縮が可能です。
ピッキング・流通加工
ユーザーからの受注があれば、商品を倉庫から取り出していきます。商品を取り出す作業はピッキングと呼ばれ、企業によってはタブレットを使用してペーパーレスでデータ管理を行う場合も少なくありません。
また、ユーザーの注文内容によっては流通加工が発生する場合もあります。流通加工とは、商品に何かしらの加工をして価値を高めることです。一例として、以下のようなものがあります。
- ラッピング
- ギフト用包装
- 値札・タグ付け
- アソート
- ハンガー掛け
- ラベル貼り
このような流通加工を行い、商品に問題がないことを確認してから出荷する準備をします。
出荷
ピッキングと流通加工が完了したら、梱包した商品に宛名を書いて出荷します。出荷作業は佐川急便やヤマトなどの配送業者に商品を渡し、顧客に届くことで業務が完了します。
ただし、Amazonや楽天市場など即日出荷が求められるEC物流においては、商品を運送会社の集荷時間までに完璧に処理することは簡単ではありません。
ユーザーの満足度向上のためには、配送業者の集荷時間までに確実に間に合うように準備することが重要です。そのためには、出荷時間や配送先にミスがないか確認する必要があります。
EC物流の4つの特徴
EC物流はほかの物流と比較すると、以下のような特徴があります。
- 少量の商品を多くの配送先に納品する
- 配送方法や受け取り方法の多様化への対応が必要となっている
- 顧客ごとに流通加工への対応が求められる
- 返品・返金対応が多い傾向にある
これらの特徴を知ることで、ほかの物流との違いを理解できるようになるでしょう。ここからは、それぞれの特徴について解説します。
少量の商品を多くの配送先に納品する
EC物流には、少ない商品を多くの配送先に納品するという特徴があります。それはECを利用している一般の消費者向けの物流であるからです。
法人向けの物流の場合、商品を一度にまとめて納品することがほとんどなので、一件当たりの数量が多くなります。
このように、EC物流では少量の商品を配送するものの、多くの消費者に対応する必要があるため、配送先が多くなる傾向にあります。商品も多岐にわたるため、多品種少量での在庫管理が必要です。
配送方法や受け取り方法の多様化への対応が必要となっている
近年では、配送方法や受け取り方法に対するニーズが多様化していることも事実です。顧客が好きな方法で商品を受け取れるように対応する必要があります。
たとえば、商品の受け取り方法ひとつとっても、以下のようにさまざまなニーズがあります。
- 直接手渡し
- 置き配
- 宅配ボックス
- コンビニ受け取り
- 通販専用宅配ロッカー
また配送方法については、速達や時間指定での配送に対応する必要があるでしょう。
このように、顧客によって希望している商品の受け取り方が異なります。顧客のニーズが取り入れられていないとサービスを利用してくれない可能性もあるため、多様化に対応する必要があります。
顧客ごとに流通加工への対応が求められる
EC物流では、顧客ごとに流通加工への対応が求められることも大きな特徴です。特に必要な流通加工としては、同梱とギフト対応があります。
同梱とは、チラシや試供品などを商品とともに梱包することです。同梱は見込み顧客に対する訴求効果があるため、顧客ロイヤリティに応じた対応が必要です。
また最近では知人や友人へのプレゼントにEC物流を利用する人も増えてきています。そこでギフト対応では、ラッピングの包装やメッセージカードの添付などが発生します。
上記のように、顧客ニーズに応えるためにも流通加工に対応することが大切です。
返品・返金対応が多い傾向にある
ほかの物流と比べて、EC物流返品・返金対応が多い傾向にあります。その要因のひとつは、顧客が商品の実物を見て購入できないからです。
中にはインターネットで商品を閲覧し実物の色やサイズ感が分からないまま購入する人もいて、「思っていたものと違う」という理由で返品・返金を求められることがあります。
このように、実店舗とは違って返品返金の依頼が多くなる可能性があるため、スムーズな対応が求められます。
その際、時間がかかったりスムーズに対応できないと顧客満足度が下がってしまうでしょう。顧客に安心して利用してもらうためにも、体制を整える必要があります。
EC物流においてよくある課題
EC物流においては、一般的に以下のような課題が発生します。
- 在庫を適切に管理できない
- 短納期への対応が難しい
- 人手が不足している
- 作業ミスが発生している
- 配送にかかるコストが増加している
自社でEC物流を構築する際も上記のような課題が発生することが考えられます。ここからはそれぞれの課題について詳しく解説します。
在庫を適切に管理できない
EC物流では多種多様な商品を抱えていることにより、在庫を管理するのが難しいといった問題があります。
たとえばアパレルの場合、1つの商品に対してサイズや色などを細かく管理する必要があります。この場合、複雑化しやすいので在庫を正確に管理するのが難しいです。
さらにEC物流はキャンセルが発生しやすいため、発送中止や商品を戻す作業が発生します。出荷後にキャンセルが起こると返品対応が生じるため、在庫のズレが起こります。
もし在庫を管理できていないと、欠品や過剰在庫の原因にもなるでしょう。特に欠品が発生すると顧客ニーズに答えられないため注意が必要です。
短納期への対応が難しい
多くのEC事業では、短納期への対応が難しいといった課題を抱えています。
顧客は商品がすぐ届くことを望んでいるため、基本的に短納期が求められています。そのためには、受注から納品までのリードタイムを短縮しなければいけません。
とはいえ、実際にはピッキングや検品、梱包などさまざまな作業があり、丁寧さも求められることから、迅速な対応が難しいのも事実です。
さらに受注数が多いほど顧客一人ひとりの商品の流通加工に対応していく必要があるので、業務にかかる時間が膨大になってしまいます。
人手が不足している
EC事業全体に言えるのが、人手不足の問題です。受注数が多くなると、倉庫作業員やトラック運転手などのリソースが足りなくなることがあります。
商材によっては繁忙期が発生することもあり、期間限定で人材を集める必要があります。ところが昨今の少子高齢化によって労働人口が減少しているため、充分にリソースを確保するのは難しいです。
さらにコロナ禍においてECの需要が高まったことで、より物流業務の負担が大きくなってしまいました。実際に「令和3年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法」によると、2019年から2021年にかけて6億個の宅配便取扱個数が増加しています。
こうした背景からは、人手不足の問題については人材を確保するか、現在の人材で業務効率化していく必要があります。
作業ミスが発生している
リソースが不足していたり業務工程が複雑だったりすると、スタッフの作業ミスが発生してしまいます。たとえば、間違えて商品を発送してしまったり、商品の配送日程を間違えたりするようなミスは発生しやすいです。
もし商品を間違えて発送してしまうと、返品対応が求められます。さらに内容によっては、クレーム対応に追われることもあるでしょう。こうした業務は本来発生しないものなので、作業ミスによって現場がひっ迫することも考えられます。
ミスが増えると顧客満足度の低下にもつながってしまい、信頼を失ってしまいます。もしミスが発生した際は、同じミスが再発しないよう防止することが大切です。
配送にかかるコストが増加している
昨今では配送にかかるコストが増加しているといった問題も無視できません。配送に不可欠な燃料費は高騰化しています。さらに働き方改革と最低賃金上昇により、作業スタッフの賃上げも行われました。
また、顧客からの注文が増えるとそれに応じて業務量も増えるため、残業時間が伸びて人件費増加にもつながります。
こうした特徴から、EC事業に転換して売上が伸びたとしても、コストが増加することで営業利益はあまり伸びない可能性も考えられます。
なお、配送業務を効率化する方法については下記記事で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
EC物流の課題を解決する方法
上記で取り上げた課題を解決するには、以下のような方法が効果的です。
- 業務フローを見直す
- 業務マニュアルを作成する
- ロケーション管理を導入する
- 物流システムを導入する
- アウトソーシングする
これらの方法を取り入れることにより、人手不足やコストの問題を解決できるようになるでしょう。ここからは、それぞれの方法について解説します。
なお、ECサイト運営で気を付けたい課題については下記記事で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
業務フローを見直す
まずEC物流の課題を解決するには、現状の業務フローを可視化してムダな作業を洗い出していくことが大切です。業務フローを振り返ることで、効率の悪い工程が見つかります。
たとえば、物流拠点を集約できる場所がないか、配送ルートは適切かなど各工程をチェックしていきます。無駄な作業が見つかった場合は、改善方法を考えていきましょう。
このように、オペレーションを整理してから取り組むことで、問題を解決できる糸口が見つかります。
業務マニュアルを作成する
業務の品質を均一化するには、業務マニュアルの作成が効果的です。
熟練者だけしか作業内容を把握していないと、後継者が同じ品質で業務をできない可能性があります。そこで業務マニュアルがあれば業務を単純化できるようになり、経験の浅いスタッフでも効率的に作業できるようになります。すると人手不足や人件費などのコストの問題を解消できるでしょう。
また属人化の解消につながるため、特定の社員が休んだり退職したりしても、業務を遂行できるようになるのも大きなメリットです。
ロケーション管理を導入する
倉庫内業務を効率化するには、ロケーション管理を導入しましょう。ロケーション管理とは、商品とその商品の場所を明確にして管理する方法です。
具体的には、倉庫管理システムを用いてハンディーターミナルで添付されたバーコードをスキャンしていきます。管理方法はいくつかあり、固定ロケーションやフリーロケーションなどさまざまです。
ロケーション管理を行うと商品と保管場所が紐づくようになり、場所が明確になるため在庫を管理しやすくなります。またピッキングミスも減るので、ピッキング効率も高まって顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
物流システムを導入する
物流システムを導入することで、受注管理や在庫管理、配送状況の確認が最適化されるようになります。
たとえば、商品の在庫管理を行う在庫管理システムによって、自動でデータ入力できるようになります。業務を自動化すれば作業ミスを減らすだけでなく、業務時間の短縮や人件費削減につながるでしょう。
また在庫の適正化も可能になり、保管効率の向上や、欠品・過剰在庫の防止策としても有効です。
物流システムを導入する際のポイントは、自社の事業に適したものを選ぶことです。業務フローの課題を把握し、そのために必要なシステムを採用しましょう。
アウトソーシングする
アウトソーシングは多くのEC事業者が取り組みやすい解決方法です。アウトソーシングすれば、自社で物流部門が不要になるため、作業スタッフの工数を削減できます。
アウトソーシング会社の強みは、物流業務に関する知見を豊富に持っていることです。自社の在庫やコストの最適化を行ってくれるため、欠品や過剰在庫のリスクを最小限におさえられます。
さらに、繁忙期によっては人材確保する必要がありますが、アウトソーシングによってその手間を省けるのもメリットです。EC物流に割いていた時間をコア業務に充てられるため、事業全体のクオリティも向上するでしょう。
顧客ニーズに対応できるEC物流を構築しよう
EC事業における物流システムをEC物流と言い、商品の出荷だけでなく商品の倉庫管理や商品の情報管理なども含まれています。
近年では配送方法や受け取り方法などにさまざまなニーズがあります。顧客満足度を向上するには、業務フローを見直し課題を解決することが重要です。ロケーション管理やアウトソーシングなどの方法を導入することで、EC物流の課題を解決できるでしょう。
テクノデジタルではECサイト運営をはじめとしたさまざまなソリューション提案を行っています。クライアント企業様の事業に合わせて提案し、収益最大化のサポートが可能です。EC事業を開業しようと考えているご担当者さまは、ぜひお気軽にお問い合わせください。
投稿者
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