2023.10.02
食品ECサイトとは?開設するメリットや課題、成功させるためのポイントを紹介
食品ECサイトは通常のECサイトと異なり、食品関係の法律に沿った手続きが必要なため、慎重に取り組むことが大切です。
本記事では、食品ECサイトを始めたい方に向けて、開設方法や成功事例、成功のためのポイントを解説します。食品ECサイトの開設をしようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
- 食品ECサイトの種類
- 食品ECサイトの市場規模
- 食品ECサイトを始める手順
- 食品ECサイトを運営するメリット
- 食品ECサイトの課題
- 食品ECサイトを成功させるためのポイント
目次
食品ECサイトとは?
食品ECサイトとは、インターネットを通じて生鮮食品や加工品などの食品を販売するECサイトのことです。
食品ECサイトは、大きく分けると以下の3種類に分けられます。
食品ECサイトの種類 | 特徴 |
---|---|
一般的な食品EC | ・生鮮食品や野菜、加工品などを販売する食品ECサイト ・Amazonや楽天市場などのモールで販売 |
ネットスーパー | ・イオンやイトーヨーカドー、西友などがネット上で食品を販売しているECサイト ・食品以外に日用品も販売 |
サブスク専門EC | ・定期的に生鮮食品や加工品などの食品を配送するサブスクリプションサービスを取り扱ったECサイト ・他店との差別化を図るため、安全性にこだわった食材や有機野菜専門などを販売 |
最近では、店舗を持たないネットスーパーも登場してきており、自宅に配送してもらえる販売スタイルのニーズが高まっています。
ECサイトについては、以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。
食品ECサイトの市場規模について
食品ECサイトの市場規模は年々伸びています。
経済産業省の調査によると、2021年の食品系のEC市場規模は2兆5,199億円でした。物販系の分野の中ではもっとも高く、食品の需要が高いことが考えられます。
参考:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました|経済産業省
一方で食品系のEC化率は3.77%と、ほかの物販系分野と比較すると「その他」を除けばもっとも少ないです。
EC化率とは、ネット(ECサイト)を通じて商品が購入された割合のことを指します。
EC化率が低いのは、生鮮食品の特性上、新鮮さが求められるのでEC化するのが難しいからだと考えられます。
しかし、2020年の新型コロナウイルス感染症が流行した時期は、巣ごもり需要の影響で、食品系のEC市場規模は前年比21.13%と大きく伸びました。2021年以降、伸びは緩やかですが、ECサイト市場における食品のニーズは高まっていくことが予想されます。
食品ECサイトを始める手順
食品ECサイトの場合、以下のような手順で始められます。
- 保健所に相談
- 営業許可の申請
- 保健所による施設の検査
- 営業許可証の交付
- ECサイトの構築
- 準備完了後に営業開始
食品ECサイトは通常のECサイトとは異なり、以下の資格と許可が必要です。
- 食品衛生責任者
- 食品衛生法に基づく営業許可
食品衛生責任者は、保健所の講習を受けることで取得可能です。
食品衛生法に基づく営業許可については、販売する商品に応じた許可証が必要です。許可の申請については、管轄する保健所によって異なるため、一度相談してみましょう。
手作りの食品を販売する場合は許可が必須ですが、仕入れ商品を販売する場合は許可が不要なケースもあります。
ただし、仕入れ商品でも小分けにしたり別の入れ物に詰め直したりする場合は、製造業の許可が必要になります。地域によって手続き内容が異なる場合もあるため、販売する商品が決まったら最寄りの保健所に確認しましょう。
食品ECサイトを運営する3つのメリット
食品販売のEC化率は少ないのが現状ですが、食品ECサイトを運営することで以下のようなメリットが得られます。
- 食品に関する情報を詳細に伝えられる
- さまざまな客層へアプローチできる
- 顧客データを収集し今後の販売戦略に活かせる
メリットを理解し食品ECサイトを運営することで、効果的な販売戦略を立てやすくなるので、ぜひ参考にしてください。
1.食品に関する情報を詳細に伝えられる
ECサイトでは実物を見せることはできませんが、商品に関する情報を詳しく記載してさまざまな魅力を伝えられます。写真を掲載すれば、より詳しい情報を届けることが可能です。
商品に関する情報の中に、生産者の想いや生産するまでのストーリーを記載することでブランディングの浸透もできます。
実店舗でも、ポスターやのぼりなどで情報を届けることはできますが、実物が目の前にある分じっくりと見られにくい傾向にあります。詳しい情報を記載し、多くの人に情報を届けられる点は、ECサイトの大きなメリットです。
2.さまざまな客層へアプローチできる
ECサイトを利用して食品を販売することで、以下のようなさまざまな客層に商品をアプローチできます。
- 仕事が忙しい社会人
- 体力的に不安な高齢者
- 幼い子どもの世話が大変な親
このような人は、実店舗に行きたくても行けない場合があります。自宅にいながら24時間気軽に食品を購入できるECサイトは、忙しい人のニーズを満たすサービスと言えます。
さらに商品を気に入ってもらい、SNSやネット上の口コミなどで拡散してもらえれば、より多くの人に認知されるので、売上アップに効果的です。
3.顧客データを収集し今後の販売戦略に活かせる
食品ECサイトを運営することで、購入履歴や閲覧した商品、個人情報などさまざまな顧客データを集められ、今後の販売戦略に活かせるメリットがあります。
実店舗でもポイントカードやクレジットカードの利用によって、顧客データを集められますが、あくまで範囲は限定的です。
ECサイトの場合は、必ずサイトを経由して商品を購入します。サイトにより顧客データや購買行動の分析ができるので、販売戦略を考える際のヒントを得られます。
食品ECサイトの課題3つ
食品ECサイトを運営する上で、以下3つの課題が挙げられます。
- 生鮮食品の管理が難しい
- 負担の大きさに対し利益率が低い
- 実店舗よりも利便性が低い場合がある
食品ECサイトを始める前に課題を知っておくことで、事前に対策を考え課題を解決できます。
課題解決と成功させるポイントの両方を理解しておけば、食品ECサイトの運営に役立つので、ぜひ参考にしてください。
1.生鮮食品の管理が難しい
食品ECサイトで商品を販売する場合、衛生管理が難しいという課題が挙げられます。とくに生鮮食品を取り扱う際は、新鮮さが重要になるため、鮮度管理の徹底が求められます。
配送に関しても、食品の鮮度を維持したまま届けてくれる業者の協力が必要です。
また2021年6月1日より、食品事業者に対して「HACCP」という衛生基準に基づいた食品管理が義務化されました。HACCPには、衛生管理計画の作成・実施や、衛生管理状況の記録・保存の必要性が明記されてます。
HACCPへの対応も必要なため、商品を販売するまでに手間がかかります。
参考:HACCPに沿った衛生管理の制度化について|厚生労働省
2.負担の大きさに対し利益率が低い
運営にかかる負担の大きさに対して利益率が低いという課題があります。
たとえば、以下のような課題があります。
- 保管の際に商品ごとに温度管理が必要
- 商品ごとに包装方法や温度管理などが異なり配送が大変
管理・配送に手間やコストがかかる一方で、食品系の商品は単価が安く利益率が低い傾向にあります。
ほかにも「物流の2024年問題」という問題があり、配送ドライバーの不足による配送料の値上がりも懸念されています。
3.実店舗よりも利便性が低い場合がある
食品ECサイトは、お店に行かずに商品を購入でき、自宅まで配送してくれるため一見便利に感じます。しかし、スーパーやコンビニが近くにある人にとっては、手軽に食品を買える環境があるため、同様の食品であればECサイトで購入するメリットは少ないです。
ただし、ECサイトでしか買えない商品や、スーパーやコンビニでは購入できない食品を販売することで、実店舗との差別化を図れます。スーパーやコンビニが近所になく、買い物に苦労している方にとっては、ECサイトは需要があると考えられます。
食品ECサイトを成功させる4つのポイント
食品ECサイトを成功させるためのポイントは、主に以下の4つです。
- リピーター向けの施策をする
- ECサイト限定の商品を用意する
- SNSを活用する
- サイトの利便性を向上させる
詳しい内容を解説するので、それぞれのポイントを理解し食品ECサイトの成功に活かしてください。
1.リピーター向けの施策をする
食品ECサイトの成功には、リピーターの獲得が必要不可欠です。どれだけ新規顧客を獲得しても、1回の購入だけでは売上が一時的に増えるだけです。
リピーター獲得には、以下のような施策があります。
- サブスクの導入
- まとめ買いによる送料無料
- 割引クーポンの配布
- 2回目以降の購入者への特典のプレゼント
- 購入回数による限定特典のプレゼントや特別割引
食品ECサイトを成功させるためには、さまざまな工夫をしてリピーターを獲得することが大切です。
2.ECサイト限定の商品を用意する
食品ECサイトの成功には、実店舗との差別化が重要です。たとえば、ECサイトでしか購入できない限定商品を販売するのが、わかりやすい手法です。
限定商品の例として、以下のようなものがあります。
- 販売側が厳選したおすすめセット
- 大容量の商品やケース単位で購入できる商品
- 地方限定の商品
ECサイトでのみ購入できる商品の展開が、顧客獲得のきっかけにつながります。
3.SNSを活用する
SNS経由でも商品購入を検討する人が増えているため、活用してみましょう。
株式会社Chocostoryの調査によると、SNSから得られる情報で商品購入の検討をしたことがある人が66.8%いることがわかりました。
参考:購買行動とSNSの関係についてのアンケート結|PRTIMES
とくにInstagramでは、ショッピング機能を利用すれば、SNSから直接商品を買ってもらえる可能性があります。「#お取り寄せグルメ」や「#お取り寄せスイーツ」といったハッシュタグ検索により、商品購入につなげることが可能です。
自社のSNSが多くのユーザーからフォローされれば、身近に商品を見てもらえる機会が増えます。ファン化やシェアによる拡散によって、集客力がさらに伸びる効果も期待できます。
4.サイトの利便性を向上させる
食品ECサイトの利便性は、サイト運営を成功させる上で重要です。ECサイトの使いやすさは、実店舗でいえばお店の快適さになります。ECサイトが使いにくく、商品購入までの手間が多いと購入意欲の減少につながります。
ECサイトの利便性を向上するには、以下のようなことを意識しましょう。
- 商品を検索しやすくする
- 商品購入までの導線のわかりやすくする
- 商品に関する詳しい情報を記載する
- 文字や写真のバランスを調整し見やすいサイトにする
利便性の向上のために、分析ツールを用いて顧客の購買行動や離脱率が高い場所の分析をするとより改善につなげられます。
食品ECサイトの成功事例3選
食品ECサイトの成功事例を3つ紹介します。
- 豊洲市場ドットコム
- 全農商品オンラインショップ
- 筋肉食堂DELI
それぞれの事例から、食品ECサイトを運営する際の成功ポイントを知ることができるので、ぜひ参考にしてください。
1.豊洲市場ドットコム
豊洲市場ドットコムは、豊洲市場での購入権を取得し、一般では購入できない商品やプロ仕様の商品を強みに、食品ECサイトを運営しています。
主に以下のようなポイントが、成功の秘訣です。
- 豊洲市場からの商品という新鮮さをアピールしている
- 朝8時までの注文であれば当日中に配送している(東京23区限定)
- ファーストビューで旬の食品を魅力的に紹介している
鮮度の良さを前面に押し出し、ほかのECサイトとの差別化に成功しています。
サイトのトップページでは「今月のおすすめ」と題して、旬のフルーツや厳選されたこだわり缶詰、人気ランキングなどをわかりやすく表示し、サイトの利用満足の向上につなげています。
2.全農食品オンラインショップ
全農食品オンラインショップは、新鮮なフルーツや野菜などを販売しているECサイトです。「頒布会」という毎月異なる商品を定期的に届けるサービスを展開しているのが特徴です。
たとえば、以下のように季節ごとに旬の果物や野菜を厳選し、購入者の元へ届けてくれます。
- 4月:トマト
- 7月:すいか
- 12月:りんご
通常の頒布会は、顧客が商品を選択できないため、好みではない商品が届く可能性があります。しかし全農食品オンラインショップは、毎月締切までに数種類の商品の中から選択可能です。
季節ごとの旬なものやおすすめ商品を楽しみながらも、好みじゃないものは避けられるといった、顧客のニーズに柔軟に対応している点は大きな魅力です。
3.筋肉食堂DELI
筋肉食堂DELIは、高タンパク、低脂質、低カロリーの3つを強みに冷凍の弁当を販売している食品ECサイトです。
高タンパクで低カロリーだと、美味しくなさそうな食事をイメージする方が多いのではないでしょうか。しかし筋肉食堂DELIのトップページは、ステーキやハンバーグの写真を用いており、食欲をそそるデザインでマイナスなイメージを払拭しています。
冷凍弁当なので、レンジでチンするだけで食べられる点も魅力的です。
筋肉食堂DELIでは、以下のような工夫でリピーターを獲得しています。
- 継続購入した方にはランクをつける
- 高ランクの場合最大15%割引が適用される
- 会員限定のメニューを展開している
プロアスリートの利用者からのリアルな意見をサイトに掲載しており、ショップ全体の信頼度を向上させています。
成功事例を参考に食品ECサイトをはじめてみよう
食品ECサイトは、実店舗に比べてさまざまな客層にアプローチできる点や、詳しい商品情報を伝えられるなどのメリットがあります。
すべての顧客がサイト経由で商品を購入するため、顧客データを集めやすく今後の販売戦略に活かせるのは大きなメリットです。
ただし食品だからこそ、衛生管理を徹底しなければいけない難しさも理解しておく必要があります。
「食品ECサイトを始めたい」「まずは何から始めればいいかわからない」という悩みを抱えている方は、ぜひテクノデジタルにご相談ください。
販売する商品やコンセプトにあわせてアイデアを提案し、集客力の向上や売上アップなど成果を出すためのサポートを行いますので、お気軽にお問い合わせください。
投稿者
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システム開発、Webサイト制作、ECサイトの構築・運用、デジタルトランスフォーメーション(DX)など、デジタルビジネスに関わる多岐の領域において、最新のトレンド情報や実践的なノウハウを発信してまいります。
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