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2025.12.04

顛末書(てんまつしょ)の正しい書き方ガイド

顛末書は、事故・トラブル・不祥事などが発生した際に、その経緯・原因・対応・再発防止策を記録し、関係者や上長に報告するための公式文書です。組織内部での事実確認や責任所在の明確化、監査や外部対応(取引先・監督官庁への報告)に備える上で重要な資料になります。
本記事では、実務で使える「顛末書フォーマット」と書き方のポイント、よくある注意点を具体的に解説します。

顛末書の目的と使い分け

顛末書の目的と使い分け

顛末書の目的は大きく分けて以下の3点です。

  1. 事実の記録:発生した事象の「いつ」「どこで」「何が」起きたかを正確に残す。
  2. 対応の説明:発生直後から現在に至るまでに行った対応とその効果を示す。
  3. 再発防止:同様の事象の再発を防ぐための具体的施策を示す。

顛末書は報告書や事故報告書、調査報告書と似ていますが、顛末書は「経緯(てんまつ)」に重点を置き、関係者への説明責任を果たすために用いられる点が特徴です。重大な事象では調査報告書と併用することもあります。

標準フォーマット(テンプレート)

標準フォーマット(テンプレート)

実務で使いやすい標準フォーマット例です。必要に応じて項目を追加・削除してください。

1. 件名(報告の要旨)
例:「XXシステム障害に関する顛末書(2025年10月7日発生)」

2. 提出先
例:部長 / 総務部 / 監査担当

3. 作成者(氏名・所属・連絡先)
例:山田 太郎(システム部)/内線:1234

4. 作成日
例:2025年10月8日

5. 発生日時
例:2025年10月7日 14:32(+JST)

6. 発生場所(物理・システム等)
例:本社サーバー(東京データセンター)/営業第1課で発生

7. 事象の概要(短く要約)
例:システムの負荷増加により一時的に注文処理が停止。約2時間で復旧。

8. 影響範囲(誰・何に影響したか)
– 顧客注文処理:影響あり(約200件)
– 社内業務:影響あり(営業、CS)

9. 経緯(時系列:日時・担当者・対応内容)
例:
– 2025/10/07 14:32:アラート発生(監視ツール)→システム部Aが確認
– 2025/10/07 14:35:一次対応としてサービスをリスタート
– 2025/10/07 15:10:原因特定(DB接続数の上限超過)
– 2025/10/07 16:30:恒久対応の実施(接続プール設定変更)→正常化確認

10. 原因(事実に基づく記載)
– 直接原因:DB接続数の上限超過
– 背景要因:新機能リリース後の負荷試験不足、接続プール設定がデフォルトのままだった

11. 対応(実施済みの対策)
– 緊急対策:サービス再起動、監視アラート閾値の見直し
– 恒久対策:接続プール設定変更、負荷テスト計画の改定

12. 再発防止策(具体的・期限・担当)
– 追加の負荷試験を実施(担当:開発チーム、期限:2025/11/15)
– 運用マニュアル改訂(担当:運用チーム、期限:2025/10/31)
– 定期監査の実施(担当:品質管理、開始:2026/1/1)

13. 関係者(関係部署・外部関係者)
– システム部、営業部、カスタマーサポート、外部ベンダー(DB運用会社)

14. 添付資料(ログ・スクリーンショット・メール履歴等)
– 監視ログ(L1–L3)
– 対応履歴のスプレッドシート

15. 備考(その他特記事項)
– 顧客への謝罪文案、補償対応の検討状況等

16. 承認欄
– 確認者(役職・氏名)/承認者(役職・氏名)

「顛末書」書き方のポイント

「顛末書」書き方のポイント

続いては「顛末書」の書き方についてポイントごとに紹介します。

時系列を厳密に

事実は「いつ(日時)」「誰が(担当者)」「何をした(行為)」の3点をできるだけ細かく書きます。可能であれば「YYYY/MM/DD HH:MM」まで記載し、メールや監視ログのタイムスタンプと突合できるようにします。時間の粒度が細かいほど検証や責任所在の特定が容易になります。

事実と推測を分ける

原因や背景を書くときは、「確認できた事実」と「現時点での推測」を明確に分離して記載します。事実には必ず根拠(ログ、スクリーンショット、担当者の報告書)を添え、推測を書く場合は「〜と推定される」「〜の可能性がある」といった注記を付けます。こうすることで、読み手が後続の調査でどこを検証すべきか判断しやすくなります。

客観証拠を添付する

記載内容を裏付ける証拠を必ず添付します。代表的な証拠は監視グラフ、該当時間帯のサーバーログ、スクリーンショット、やり取りしたメールやチャットのログ、関連するジョブスケジュールの履歴など。証拠が揃っていることで第三者レビューや監査対応がスムーズになります。添付ファイル名や参照箇所(例:添付A:監視グラフ p95レスポンス)を本文に明記すると親切です。

対応の効果を書き切る

実施した対応がなぜ有効であったか、どの指標で正常性を確認したかを必ず数値で示します。単に「復旧した」ではなく、対応前後の比較(ベースライン→対応後の値)を出し、検証に用いたデータソースを明記します。指定する指標はケースによるが、典型的にはレスポンスタイム(平均/p95/p99)、エラー率(%)、スループット(req/sec)、MTTR、影響ユーザー数・注文数、売上影響の概算などです。

再発防止は“具体的で実行可能”に

「再発防止を徹底する」だけでは実効性がありません。必須で明記する項目は、担当(Who)、期限(When)、具体作業(What)、成果物・検証方法(How)、報告先(To)です。さらに、30/60/90日などのフォローアップ日程と評価基準も併せて書くと計画性が伝わります。外部ベンダーやSLAの見直しが必要な場合はその対応も含めておきます。

言い訳・感情的表現は避ける

顛末書は公式な事実報告書です。主観的・感情的な表現や責任回避を意図した文言は避け、根拠に基づく冷静な記述に徹してください。「たぶん」「おそらく」「〜さんのせいで」といった表現はNGです。一方で、必要な謝罪表現(対外向け)や改善に向けた決意表明は適切に使って構いませんが、内部文書としては事実→原因→対策の筋道を明確にすることが最重要です。

よくある誤り・注意点

よくある誤り・注意点

以下は顛末書で頻出するミスと、その具体的な影響(何がまずくなるか)、現場で使える回避策/書き換えテンプレをセットで示した実務向けの拡張解説です。顛末書は証拠と再現性が命なので、これらをチェックリスト化して運用に組み込むのがおすすめです。

  • 曖昧な時間表記:日付だけ、午後だけ等は避ける。
  • 証憑不足:ログやメールを添えないと上長や監査で否定されることがある。
  • 再発防止が抽象的:実施計画がない再発防止策は形骸化する。
  • 利害関係者の抜け:関係部署や外部ベンダーの記載漏れで対応が遅れる。

まとめ

まとめ

顛末書は単なる「事故の報告」ではなく、組織としての学びと信頼回復のための重要なドキュメントです。書き方の基本は「正確な時系列」「事実と推測の区別」「客観的証拠の添付」「実行可能な再発防止策の明示」です。テンプレートをベースに、関係部署と早期に連携して事実確認・証跡収集を行い、透明性のある報告を心がけましょう。必要であれば、貴社の業種・事象に合わせた顛末書テンプレート(Word/Excel)を作成しますので、その場合は「業種」「想定事例(例:情報漏えい、業務ミス、システム障害など)」を教えてください。

投稿者

  • デジタルトレンドナビ編集部

    システム開発、Webサイト制作、ECサイトの構築・運用、デジタルトランスフォーメーション(DX)など、デジタルビジネスに関わる多岐の領域において、最新のトレンド情報や実践的なノウハウを発信してまいります。