2025.09.18
RFQ(見積もり依頼書)とは?RFI、RFP、RFQの違いも解説

企業活動において、製品やサービスを外部から購入する機会は数多く存在します。その際、適正な価格で品質の高いものを手に入れることは、企業の競争力を左右する重要な要素となります。
そこで欠かせないのが「RFQ(Request For Quotation:見積依頼書)」です。単なる価格交渉の道具にとどまらず、戦略的な調達活動を支える中核ツールであるRFQについて、その定義から効果的な運用方法、そして未来までを深掘りして解説します。
目次
RFQとは

RFQ(Request For Quotation)は、企業が特定の製品、部品、サービスなどを調達する際に、サプライヤー(供給業者)に対して、その品目やサービスに関する具体的な見積もりを公式に依頼するための文書です。
RFQの主な目的は、以下の2点に集約されます。
- 正確な価格情報の取得
調達しようとしている品目やサービスに対する具体的な単価、総額、支払い条件などをサプライヤーから提示してもらうことで、予算策定やコスト管理を正確に行う基盤とします。
- サプライヤーの比較検討
複数のサプライヤーから見積もりを収集し、価格だけでなく、納期、品質、技術力、サポート体制、実績などを総合的に比較検討することで、最適なサプライヤーを選定するための客観的なデータを得ます。
RFQは、企業が求める要件を明確に定義し、それをサプライヤーに正確に伝えるための重要なコミュニケーションツールでもあります。
RFI、RFP、RFQの違い

調達活動にはRFQの他にも類似する頭字語が存在します。これらはそれぞれ目的が異なり、調達プロセスの異なる段階で活用されます
略語 | 正式名称 | 目的 |
---|---|---|
RFI |
Request For Information (情報提供依頼書) |
潜在的なサプライヤーに関する情報を収集し、市場の動向や技術的な可能性を探る。 |
RFP | Request For Proposal (提案依頼書) |
特定の課題解決やプロジェクト遂行のための具体的な提案や解決策をサプライヤーから募集する。 |
RFQ | Request For Quotation (見積依頼書) |
特定の製品やサービスに対する正確な価格見積もりをサプライヤーから取得し、比較検討する。 |
これらの文書は、通常、RFI、RFP、RFQの順に段階的に利用されることが多いです。
- まずRFIで広範な情報を収集し、候補となるサプライヤーのリストを絞り込みます。
- 次に、RFPで特定の課題に対する具体的な解決策やアプローチを募り、技術的実現性や創造性を評価します。
- 最終的に、RFPで絞り込まれた、あるいはRFPを介さずに直接選定されたサプライヤーに対し、RFQを発行して最終的な価格と条件を提示してもらい、発注先を決定します。
この流れを適切に踏むことで、調達プロセス全体の効率性と効果を高めることができます。
RFQ(見積もり依頼書)が使われる業界・場面

RFQは、特定の製品やサービスの明確な仕様と数量が定まっているあらゆる業界・場面で活用されます。
- 製造業:部品、原材料、製造装置、治工具などの購入。OEM生産の委託。
- 建設業:建築資材、設備、専門工事業者の選定。
- IT・ソフトウェア業:ハードウェア、ソフトウェアライセンス、システム開発、インフラ構築、クラウドサービスの利用。
- サービス業:オフィス備品、消耗品、清掃サービス、警備サービス、コンサルティングサービス、広告宣伝、人材派遣。
- 小売業:商品の仕入れ、店舗設備、什器。
- 公共機関・政府機関:各種物品の購入、公共事業の委託。
このように、規模や業種を問わず、企業が外部から何かを調達する際には、その透明性と効率性からRFQが幅広く利用されています。
RFQ(見積もり依頼書)のポイント

見積もり依頼は単なる事務手続きではなく、戦略的な調達ツールとして最大限に活用するためには、いくつかの重要なポイントがあります。
明確な要件定義の重要性
RFQの最も重要な要素の一つは、調達要件の明確性です。曖昧な要件は、サプライヤーからの誤解を招き、不正確な見積もりや期待と異なる製品・サービスの納入に繋がります。
- 具体的かつ詳細に
「良いもの」「早く」といった主観的な表現ではなく、「〇〇の機能を有し、△△の性能基準を満たす」「発注後〇営業日以内に納品」など、誰が読んでも同じ解釈ができるように具体的に記述します。
- 図面や仕様書の添付
言葉だけでは伝わりにくい複雑な製品やサービスの場合、詳細な図面、CADデータ、技術仕様書、品質基準書などを添付することで、サプライヤーの理解を深めます。
- 必須要件と希望要件の区別
必須の条件と、あれば望ましい程度の希望条件を明確に区別して記載することで、サプライヤーは提案の自由度を保ちつつ、貴社の優先順位を理解できます。
効果的なコミュニケーション
RFQプロセス全体を通じて、サプライヤーとの円滑なコミュニケーションを維持することが不可欠です。
質疑応答の機会 | サプライヤーからの質問を受け付ける期間と窓口を明確に設定し、迅速かつ的確な回答を提供します。質問に対する回答は、他のサプライヤーにも共有することで、情報の公平性を保ちます。 |
---|---|
定期的な連絡 | プロセス中に進捗状況を適宜共有するなど、サプライヤーとの透明性の高いコミュニケーションを心がけます。 |
フィードバック | 見積もり結果にかかわらず、RFQへの参加に対し感謝を伝え、可能であれば、選定に至らなかったサプライヤーに対しても、理由の一部を簡潔にフィードバックすることで、将来的な関係構築に繋がります。 |
RFQの課題と対策

RFQプロセスは非常に有効なツールですが、運用にはいくつかの課題も存在します。それらを認識し、適切な対策を講じることで、より効率的でリスクの少ない調達活動が可能になります。
課題例
- 情報不足や不正確な要件
- 比較の難しさ
- 時間とコストの負担
- サプライヤーとのコミュニケーション不足
- 価格以外の要素の評価の難しさ
- 価格の妥当性の判断
対策例
これらの課題に対処するために、以下の対策が有効です。
- 要件定義の徹底とテンプレート活用
- チェックリストの活用
- 標準テンプレートの作成
- 過去事例の活用
- ITツールの導入(e-Procurement)
- サプライヤーポータル
- 自動比較機能
- 専門知識の活用とチーム体制
- 部門横断型チーム
- 調達専門家の育成
- サプライヤーとの関係強化
- 情報共有の促進
- フィードバックの提供
まとめ

RFQは、単に価格を見積もるための文書ではありません。それは、企業の調達活動を戦略的に推進し、コスト削減、品質向上、リスク管理、そして企業の持続可能性に貢献するための強力なツールです。
変化の激しい現代において、RFQは企業のサプライチェーン戦略の中核として、今後もその重要性を増していくでしょう。このガイドが、貴社のRFQプロセスの最適化と、より戦略的な調達活動の一助となれば幸いです。
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システム開発、Webサイト制作、ECサイトの構築・運用、デジタルトランスフォーメーション(DX)など、デジタルビジネスに関わる多岐の領域において、最新のトレンド情報や実践的なノウハウを発信してまいります。
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