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2024.08.08

属人化をツールで解消する時のポイントとは?属人化の原因とあわせて解説

属人化を放置すると、組織に深刻なデメリットが生じます。

属人化によるデメリットとはなにか、属人化が発生してしまう理由と解消するメリット、また解消するためのツール導入について解説します。

属人化をそのままにしてしまうデメリットとは

属人化をそのままにしてしまうデメリットとは

属人化の放置によるデメリットは、特定の個人に業務が集中することで長年勤務していた人が不在や退職してしまった際に、業務が滞る可能性が高くなるところにあります。

これは、組織の安定性と継続性において大きなリスクとなります。

また、属人化を放置し続けると、知識や技術の共有が難しくなり組織全体の成長が阻害されてしまいます。個人の能力に依存しすぎることは、新しいアイデアを生みにくくし、改善の機会の損失・イノベーション停滞へ直結する恐れもあります。

さらに、特定の個人に過度な負担がかかることで、ストレスや燃え尽き症候群のリスクが高まります。過度なストレスは生産性の低下や退職などを引き起こし、結果として貴重な人材の流出につながる可能性があります。

属人化は短期的には効率的に見えても、長期的には組織の柔軟性や適応力を損ない、競争力の低下を招く可能性があります。

なぜ属人化は起こるのか

なぜ属人化は起こるのか

それでは、なぜ属人化が起こるのか7つのポイントに絞って理由を解説します。

業務プロセスの未整備

業務プロセスとは、仕事の進め方や手順のことを指します。これが整備されていないと、どのように仕事を進めればいいのかが不明確になります。その結果、個々人が自分なりのやり方で仕事を進めることになり、属人化が進んでしまいます。

例えば、新しい顧客からの問い合わせに対応する業務があったとします。

業務プロセスが整備されていない場合、Aさんは電話で対応し、Bさんはメールで対応し、Cさんは直接訪問するかもしれません。このようにそれぞれ違った対応を行うことで、個人の経験や判断に頼ることになり、特定の人がいないと適切な対応ができなくなる可能性があります。

業務プロセスが整備されていれば、誰が担当しても同じような対応ができ、品質も一定に保つことができます。また、知識やスキルが不十分な新入社員や中途社員も明確な手順に従うことで、早く仕事を覚えることができます。

ナレッジの共有不足

ナレッジとは、仕事に関する知識や経験のことを指します。これには、業務のコツであったり、顧客との対応方法、過去の成功事例や失敗事例など、様々な情報が含まれます。ナレッジの共有が不足すると、これらの貴重な情報が特定の個人の中だけにとどまってしまいます。

例えば、ある大口顧客との商談で成功したとします。しかし、その成功のポイントや顧客の好みなどの重要な情報が対応した人の頭の中だけに残ってしまうと、他の人がその顧客と接する際に同じように上手く対応できない可能性があります。

特定のスキルや経験への依存

この問題は、ある特定の業務や技術が、特定の個人の持つスキルや経験に強く依存している状態を指します。

このような状況が発生する理由としては、以下のような状況が考えられます。

  1. 特殊な技術や知識が必要な業務がある
  2. 長年の経験が必要な判断や対応がある
  3. 効率を重視するあまり、特定の人物に業務が集中する

こういった特定のスキルや経験をもっている人への依存が進むと、その個人が休暇や病気で不在の際に、業務が滞ることはもちろん、過度な負担やストレスがかかることもあります。

もし、その個人が退職した場合、重要な知識やスキルが失われ、結果として新しいアイデアや改善の機会が失われるでしょう。

コミュニケーションの不足

職場でのコミュニケーションが不足すると、結果として属人化につながります。

たとえば、重要な情報が特定の個人にのみ伝わっている状態であると、他のメンバーが把握できない状況が生まれます。

また、情報が正確に伝わっていないことも業務の遅延や質の低下につながります。メンバー間の協力が減少し、個人プレーが増えることで特定の個人に業務が集中したり、重複作業が発生したりする可能性があります。

重複作業など個人に業務が集中することで、自分の仕事の意義や全体像が見えづらくなり優秀な人材が他社へ転職するといったリスクが生じます。

業務の複雑化

業務の複雑化は、属人化を引き起こす重要な要因の一つです。ビジネス環境の変化や技術の進歩に伴い、業務内容が複雑になり、特定の個人の専門知識や経験に頼らざるを得なくなることがあります。 スキルや経験がない初心者の場合は比較的単純な業務から覚え始めますが、経験を積むにつれて、より複雑な業務に携わるようになります。しかし、業務が複雑化しすぎると、全体像を把握することが難しくなり、特定の個人だけが理解している状況が生まれやすくなります。

さらに、業務の複雑化は、業務全体像の把握を困難にしてしまいます。エラーや不具合のリスク増大により、複雑な手順や判断が増えることで、さらなるミスを誘発してしまう可能性もあります。 ミスをしないためのチェック機能も必要ですが、チェックにばかり時間がとられてしまうことも生産性を低下させる要因となりかねません。 そういった複雑な業務は変更や改善が難しくなり、環境変化への対応が遅れることもリスクとしてあげられます。

組織文化や風土

会社や組織の中で共有されている価値観、行動様式、慣習などこれらは明文化されていないことも多く、暗黙のルールとして存在していることがあります。

チームワークよりも個人の成果を重視する文化では、特定の個人に業務が集中しやすくなります。例えば、「この仕事はAさんに任せておけば大丈夫」という考え方が定着してしまうと、Aさんへの依存度が高まってしまいます。

また、失敗を厳しく咎める文化では、社員が新しいことにチャレンジしたり、他人の仕事に関与したりすることを躊躇してしまいます。結果として、特定の個人が「確実にできる人」として固定化されてしまいます。

ツール導入における属人化解消のメリットとは

ツール導入における属人化解消のメリットとは

ここまで属人化におけるデメリットを解説しました。

個人から、組織運営にまで派生する大きな問題になりかねないことが理解いただけたかと思います。

では、属人化を解消する取り組みを行おうとしたとき、何から始めればよいのでしょうか。

属人化の解消は、個人だけでは難しく、場合によっては組織全体で取り組む必要があります。

ただし、個人で取り組むにしても、組織で取り組むにしても必要になってくるのは、統一されたルールです。

個人、組織単位で日常業務に負担にならない範囲でのルールを設定し、そのルールを何度も見直しながら運営していく必要があります。

また大規模な組織変更が発生した場合には、ルールも同様に見直しも必要になります。

しかし、大人数へ同時にナレッジ共有したい場合や、多くの情報を横断的に検索したい場合など、ルールだけでは対応できないこともあります。

そのため、組織の規模が大きくなればなるほど、ツール導入を行うことが効率的に属人化を解消する手段となります。

ツールでの属人化解消のポイントとは

ツールでの属人化解消のポイントとは

では、実際にどのようなツールを導入すべきなのでしょうか。さまざまなツールが存在するため、目的や用途にあったツールの選定が必要になります。

ここからは、ツールを活用した属人化解消にあたってのポイントを解説していきます。

標準化されたプロセスの導入

標準化されたプロセスの導入により、誰が担当しても同じ品質と効率で業務を遂行できるようになります。

具体的には、業務フロー管理ツールを活用し、各タスクの手順や必要なリソースを明確に定義します。例えば、JiraやTrelloなどのプロジェクト管理ツールを使用して、標準的なワークフローを設定し、タスクの進捗を可視化します。

特にJiraは開発プロジェクトなど作業フローが複雑であったり、ひとつの作業が複数作業に影響を及ぼすような関係性を可視化すべき場合に有効です。

一方で細かなフローは関係なくタスクそのものを可視化することが優先である場合は、Trelloが有効です。

標準化されたプロセスを導入することで、特定の個人のスキルや経験に依存せず、組織全体で効率的に業務を遂行できる環境が整います。

ナレッジベースの構築

組織内の知識や経験を一元管理し、誰もが必要な情報にアクセスできるようにするには、効果的なナレッジベース構築が必要です。

例えば、ConfluenceといったWiki型ツールは社内の知識を体系的に整理し、誰でも編集・更新できる環境を提供できるものは、業務の辞書がわりになります。

Stack Overflow for TeamsといったQ&Aプラットフォームは、よくある質問とその回答を蓄積し、担当者が不在でも作業者が簡単に検索できるようなツールです。

SharePointなどのドキュメント管理ツールは、マニュアルや手順書などを集中管理し、最新版を常に利用できるようにします。

これらのツールを活用し、日々の業務で得た知識や経験を積極的に共有・更新することで、特定の個人に頼らない、組織全体で知識を共有できる環境が整います。

業務の可視化とトラッキング

業務の可視化とトラッキングは、特定の個人に業務が集中することを防ぎ、全員が業務の進捗状況を把握することを目指すものです。

一般的な、タスク管理ツールであるAsana、Trelloは各メンバーの担当タスクと進捗状況を一目で確認できること、チャットツールとの連携なども可能なことから業務に取り入れられやすいツールです。

大規模なプロジェクトの全体像と各タスクの関連性を可視化するには、既に紹介したJiraが有効です。また、タスクのスケジュールと進捗を時系列で表示し、遅延や問題点を発見する必要がある場合は、ガントチャートツールの導入も検討が必要です。

これらのツールを活用することで、業務の透明性が高まり、チーム全体で効率的に業務を遂行できる環境が整います。

自動化ツールの活用

自動化ツールの活用は、特定の個人のスキルや経験に依存していた作業を、誰でも実行可能な自動化されたプロセスに変換できます。

一般的に多く取り入れられているのは、 RPA(Robotic Process Automation)と呼ばれるツールで、定型的な事務作業やデータ入力などを自動化し、人為的ミスを減らすことに貢献できます。

また、ワークフロー自動化ツールは、異なるアプリケーション間のデータ連携や処理を自動化できるため、複数のアプリケーションのデータを扱う業務には有効です。

近年着目されているのはAI・機械学習ツールです。データ分析や予測、意思決定支援などの高度な業務を自動化したり、チャットボットのシステムとしても利用されています。

これらのツールを適切に導入することで、特定の個人の経験や勘に頼っていた業務を標準化・自動化できます。

コミュニケーションツールの整備

効果的なコミュニケーションツールを導入することで、情報の偏在を防ぎ、チーム全体で知識や情報を共有できるようになります。

ビジネスチャットツールは、リアルタイムでの情報共有や議論ができるため、わからないことをすぐに確認でき、メールより気軽に相手に話しかけることができます。

また、ビデオ会議ツールによって遠隔地にいるメンバーとも顔を見ながら会話でき、より密なコミュニケーションが可能になります。

他にも文書の共同編集や共有を容易にするコラボレーションツールも有効です。

これらのツールを適切に活用することで、特定の個人に情報が集中することを防ぎ、透明性の高い組織コミュニケーションを実現できます。

継続的なトレーニングと教育

継続的なトレーニングと教育は、組織全体のスキルレベルを向上させ、特定の個人への依存を減らすことができます。

eラーニングプラットフォームの導入は、社員が自分のペースで学習できる環境を提供し、多様なスキル習得を支援するのに役立ちます。

バーチャルリアリティ(VR)はいままでゲームやエンターテイメントでの導入が進んでいましたが、マニュアルなどだけでは伝えにくいプロフェッショナルなスキル継承のために実験的に導入がされはじめました。実践的なシミュレーションや遠隔指導を通じて、より効果的でスピーディな技能習得が期待されています。

まとめ

まとめ

運用やルールといった体制とともにツール導入も検討することで、より効率的かつスピーディな属人化解消につなげられます。

ツールについても、随時効果測定しながら見直しが必要であるため、高額なツール導入においては計画性が求められる可能性があることに注意しましょう。

投稿者

  • デジタルトレンドナビ編集部

    システム開発、Webサイト制作、ECサイトの構築・運用、デジタルトランスフォーメーション(DX)など、デジタルビジネスに関わる多岐の領域において、最新のトレンド情報や実践的なノウハウを発信してまいります。