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2024.07.25

シックスシグマとは?原則や取り組みの流れ、メリットをわかりやすく解説

「シックスシグマってなに?」「シックスシグマを取り入れたいが、どうすればいい?」

シックスシグマは、品質管理や業務改善の手法として広く知られており、統計学をもとに、エラーを最小限に抑えることが目的です。


本記事では、シックスシグマの基本的な原則やその歴史、具体的な活用例について詳しく解説します。また、関連する専門用語やシックスシグマの導入によるメリットについても触れます。シックスシグマを理解することで、企業の業務改善の参考にしてください。

シックスシグマとは?

シックスシグマとは?

シックスシグマとは、ビジネスプロセスの品質向上と効率化を目指す管理手法です。主に統計的手法を活用し、エラーや欠陥の減少が目的です。

シックスシグマの由来

シックスシグマの語源の「σ」とは、統計学用語で標準偏差のことをいいます。簡単に言うと、平均からどの程度バラつきがあるか示します。

シックスシグマは統計学にもとづいた品質管理手法で、プロセスのバラつきを6シグマ以内に収め、高品質を保証することを目指します。「」とは、100万回の機会あたり3.4回の欠陥しか発生しない状態を意味します。

用いる際には6σですが、他にも1σ〜5σまであり、エラー回数は以下の通りです。

バラつき 100万回あたりのエラー回数
690,000
308,537
66,807
6,210
233
3・4

シックスシグマの歴史

シックスシグマの歴史は1980年代に始まり、モトローラ社のビル・スミスが統計的手法で製品のバラつきを減少させる方法として提案しました。シックスシグマ導入により、モトローラ社は品質向上とコスト削減を実現し、他の企業にも影響を与えています。

1990年代には、GEのCEOジャック・ウェルチが全社的に導入し、ビジネスプロセスを大幅に改善しました。

その後、シックスシグマは製造業以外にも広がり、21世紀にはリーンシックスシグマとして進化し、今日でも多くの企業で使われています。

シックスシグマの活用例

シックスシグマの活用例は多岐にわたります。製造業では、製品の品質向上とコスト削減を達成し、エラーや欠陥を大幅に減少させるために使われます。 また、医療業界では、患者ケアの品質向上や医療ミスの減少を目標として用いられているのが主な活用例です。具体的な事例を通じて、シックスシグマの効果を理解し、企業の業務改善に役立てられます。

シックスシグマの原則

シックスシグマの原則

シックスシグマの原則は、ビジネスプロセスの改善を目指すための基本的な考え方と方法を示しており、以下の4つの主要な原則に基づいています。

4つの原則に基づき、シックスシグマは企業の品質向上と効率化を支える強力な手法となっています。

VOCを重視する

シックスシグマの1つ目の原則は、重要なVOCを集めて重視することです。

VOC(顧客の声)を重視すると、顧客のニーズや期待を理解し、分析した結果をもとに製品やサービスを改善して成功に繋がります。

顧客の声を集める際は、アンケートやインタビューなどで収集し、顧客の要求を明確に視覚化することが可能です。

例えば、新製品開発では、顧客が求める機能や品質を設計に取り入れることで満足度を高められます。さらに、顧客からの苦情や不満は問題発見の手がかりとなり、改善策を講じることで、より良い製品やサービスを提供できます。

VOCを重視すると、顧客満足度を向上させ、競争力のある製品やサービスの提供が可能です。

プロセスの改善を目的とする

シックスシグマの2つ目の原則は、導入の目的が必ずプロセスの改善であることです。

シックスシグマは、プロセスの改善を目指す手法で、企業の業務効率と品質向上に不可欠です。

シックスシグマは、対象の業務を改善するための手法であり、エラー回数を減らすことが目的です。導入する際は、機械のエラー改善だけでなく、人の手で行われるプロセスでも「手順」に注目して改善しましょう。

データ分析を行う

シックスシグマの3つ目の原則は、改善するプロセスをデータを用いて分析する点です。シックスシグマの成功にはデータ分析が不可欠です。データ分析により、プロセスの現状を正確に把握し、具体的な改善策を導き出せます。データ分析を行う際は、現状のプロセスからデータを収集・整理し、統計手法で分析して問題点を特定します。 問題点を特定したら、分析結果にもとづいて改善策を考案・実行すると、統計的根拠にもとづいた意思決定が可能です。 シックスシグマの各ステージでデータ分析は重要な役割を果たし、正確で持続可能な改善が可能です。

組織全体で行う

シックスシグマの4つ目の原則は、導入する際は組織全体で行うことです。 シックスシグマは、組織全体で取り組むプロセス改善手法です。

全ての部門と社員が協力して、シックスシグマを導入すると、最大限の効果が発揮できます。成功にはトップの強力なサポートが不可欠で、トップダウンのアプローチで全社員にシックスシグマのメリットを認識させ、積極的な参加を促します。 社員の教育とトレーニングも重要であり、部門間の連携とコミュニケーションも必要です。 全社員が協力し、共通の目標に向かって目指せるようにして、シックスシグマを効率よく行いましょう。

言葉が難しい?シックスシグマの関連用語

言葉が難しい?シックスシグマの関連用語

シックスシグマを学ぶ際に、専門用語が多くて難しいと感じるかもしれません。しかし、シックスシグマの用語を理解すると、シックスシグマの手法をより効果的に活用できます。

ここでは、以下の3つのシックスシグマに関連する重要な用語をわかりやすく解説します。

関連用語がわかると、シックスシグマの概念をより深く理解し、実践に役立てることができるでしょう。

VOC

VOCとは、「Voice of the Customer」の略で、顧客の声という意味です。

シックスシグマにおいて重要な概念であり、顧客のニーズや期待、不満を把握するための出発点です。

VOCはアンケートやインタビュー、フィードバックフォーム、カスタマーサポートの問い合わせ、ソーシャルメディアのコメントなどから集めます。

シックスシグマのプロジェクトでは、VOCをもとに目標を設定し、プロセス改善を行います。しかし、集めたVOCがズレていると、プロセスを改善しても、本当に顧客が求めているニーズとは違う商品やサービスを提供してしまうため、注意が必要です。

CTQ

CTQとは、「Critical to Quality」の略で、品質に対する重要項目という意味です、シックスシグマのプロジェクトでは中心的な概念です。

CTQは、顧客のニーズを具体的な品質基準に変換する要素であり、企業が顧客満足度を高めるための重点項目を明確にします。

重要項目を特定するには、VOCを収集し、製品の性能やデザイン、価格などを具体的な基準に変換することから始まります。

具体的な基準を特定すると、新製品の開発時に品質評価を行い、必要な改善を施して顧客満足度を最大化することが可能です。

CTQを適切に設定して、改善活動に反映させましょう。

COPQ

COPQとは、「Cost Of Poor Quality」の略で、低品質により発生するコストのことです。企業の収益に大きく影響するため、シックスシグマのプロジェクトで重点的に取り組むべき領域です。

COPQは以下の4つのコストに分類されます。

  • 内部失敗コスト
  • 外部失敗コスト
  • 評価コスト
  • 予防コスト

4つのコストを削減すると、企業は利益率向上を実現し、品質向上により顧客満足度とブランド信頼性を高めることができます。

5ステップで行うシックスシグマの流れ

5ステップで行うシックスシグマの流れ

シックスシグマのプロジェクトは、主に以下の2種類の手法で行われます。

どちらも、5つのステップで進み、体系的かつ効果的にプロセス改善を行う設計です。

以下のセクションでは、各ステップの詳細について説明します。

DMAIC(ディーマイク)手法

DMAIC(ディーマイク)手法は、シックスシグマの基本的なプロセス改善の手法です。DMAICは以下の5つのステップで構成されており、体系的に問題を解決し、プロセスを最適化するためのアプローチです。

DMAIC手法を通じて、シックスシグマは継続的なプロセス改善を実現し、組織全体のパフォーマンスが向上します。

定義(Define)

「定義(Define)」では、改善すべきプロセスや問題を明確にし、その範囲と目標を設定します。

具体的には、顧客の声やビジネスニーズにもとづいて測定可能な目標を定め、関係者全員が共通の理解を得るのが重要です。

また、チームの役割と責任を明確にし、成功を測るための評価基準を設定します。この「定義」ステップをしっかりと行うと、プロジェクトの後続ステップがスムーズに進行し、シックスシグマの効果を最大限に引き出せます。

測定(Measure)

「測定(Measure)」ステップは、プロセスの現状を定量的に評価する重要な段階です。

流れとしては、現状を把握するために、対象を明確に定義し、プロジェクト目標に関連する指標を選びます。

指標を選んだあとは、収集したデータを整理し、不具合やユーザの不満点をチェックして問題点を洗い出します。

問題点を洗い出したら、基本的な統計分析を実施し、現状のパフォーマンスを把握します。現状を把握して、次の「分析(Analyze)」ステップでの問題特定に役立つ資料を提供し、シックスシグマが確実に進行するための基盤を築きましょう。

分析(Analyze)

「分析(Analyze)」では、データを詳細に検討し、プロセスの問題点や根本原因を特定する段階です。

データの傾向やパターンを統計的ツールで視覚化し、問題の原因を把握します。

統計的検定や回帰分析を用いてデータ間の関連性を評価すると、シミュレーションで改善策の効果の予測が可能です。

改善(Improve)

「改善(Improve)」では、分析結果をもとに具体的な改善策を実行する段階です。

問題の根本原因に対する効果的な対策を立案し、計画を立てて必要なリソースを確保して、関係者と協力して改善策を実行しましょう。

管理(Control)

「管理(Control)」ステップは、改善されたプロセスを長期的に維持する段階です。

実行したプロセスを継続的に確認して、従業員や顧客からのフィードバックを収集し、問題点を特定して管理を行います。管理する際は、持続できている状態か定期的に把握し、改善成果を組織全体で共有しましょう。

DMADV(ドマドブ)手法

DMADV手法は、新しいプロセスや製品を設計する際に使用されるアプローチです。既存のプロセスを改善するDMAICとは異なり、DMADVはゼロからの設計に焦点を当てています。

DMADVの流れは、以下の5ステップです。

5つのステップをそれぞれ解説します。

定義(Define)

「定義(Define)」ステップは、プロジェクトの方向性と目的を明確にする初段階です。

インタビューやアンケートを通じて、VOC(顧客の声)を直接聞き、後の設計プロセスに役立てます。

また、プロジェクトの範囲を明確にし、対象者を特定してニーズや要求を把握します。

定義の段階での計画と顧客要求の具体化が、後の成功を左右するため、丁寧に進めることが重要です。

測定(Measure)

「測定(Measure)」ステップは、新しいプロセスや製品の設計に必要なCTQを収集し、顧客のニーズを具体的な数値で示す段階です。

顧客のニーズを集めて、製品の耐久性や応答時間などの具体的な数値を設定します。

分析(Analyze)

「分析(Analyze)」ステップは、収集データを基に新しいプロセスや製品の設計要件を詳細に解析する段階です。

データをもとに現状のパフォーマンスを評価し、顧客のニーズとのギャップを明確にします。

回帰分析や分散分析などの統計手法を用いてデータのパターンを解析し、原因と結果の関係を特定します。

設計(Design)

「設計(Design)」ステップは、新しいプロセスや製品の詳細な設計を行う重要な段階です。

CTQやこれまでのステップで集めた情報にもとづき、具体的な仕様を決定します。

設計を決める際は、シミュレーションやモデリングで設計がニーズを満たすか確認し、試作やテストを通じて設計の妥当性を評価・修正しましょう。

実証(Verify)

「実証(Verify)」ステップは、新しいプロセスや製品が期待通りのパフォーマンスを発揮するかを確認する段階です。

設定したテストプロセスを実際に運用したら、DMAIC手法も使い、改善を進めましょう。

シックスシグマを導入するメリット3つ

シックスシグマを導入するメリット3つ

シックスシグマを導入することで得られるメリットは多岐にわたります。主なメリットは以下の3つです。

3つのメリットを詳しく解説します。

長期的な改善効果がある

シックスシグマのメリットの1つ目は、プロセスが誰でも共有できるようになり、長期的な改善効果があることです。

シックスシグマは継続的なデータ収集と分析を通じて、組織全体が改善サイクルに参加し、効率と品質の向上を図ります。

改善サイクルを繰り返すことで、ノウハウが蓄積され、継続的な改善効果が見込めます。

汎用性が高い

シックスシグマのメリットの2つ目は、様々な業界や企業に対応できる汎用性の高さです。

シックスシグマは製造業だけでなく、サービス業、金融業、医療業界など、さまざまな業種で効果を発揮し、品質管理やプロセスの効率化に役立ちます。

例えば、製造業では不良品の減少、サービス業では顧客満足度の向上、金融業界では取引プロセスのミス削減、医療業界では治療プロセスの改善に利用されています。

また、シックスシグマは中小企業から大企業まで適用できるため、業界や会社の大きさに関係なく取り組めるのがメリットです。

人材育成が可能

シックスシグマのメリットの3つ目は、シックスシグマを通じて、人材育成が可能な点です。

シックスシグマを導入するには、会社全体を巻き込む必要があり、周りをその気にさせるトーク力やマネジメント能力が磨かれます。

さらに、プロジェクトを通じて実践的な経験を積むことで、他部門との連携やリーダーシップスキルも向上します。

シックスシグマが定着すると、社員が常にプロセス改善を意識するようになり、有能な人材へと成長が期待できるでしょう。

シックスシグマとリーンシックスシグマの違い

シックスシグマとリーンシックスシグマの違い

シックスシグマとリーンシックスシグマは、どちらもプロセス改善を目指す手法ですが、それぞれ異なるアプローチと焦点があります。

シックスシグマは統計的な分析手法を用いて、プロセスのばらつきを減らし、品質を向上させることが目的です。具体的には、データ収集と分析を基にして問題点を特定し、改善策を導入します。

一方、リーンシックスシグマは、シックスシグマの統計的手法とリーンのムダの排除アプローチを組み合わせたもので、プロセス内の無駄を削減し、効率を最大化することが目的です。

シックスシグマは品質向上に、リーンシックスシグマはムダの排除と効率化に焦点を当てています。

シックスシグマの導入に成功して、業務改善をしよう!

シックスシグマの導入に成功して、業務改善をしよう!

ここまで、シックスシグマの原則や取り組みの流れについて紹介しました。

シックスシグマを導入すると、長期的な改善効果が見込めることや人材育成が可能など様々なメリットがあります。

シックスシグマのメリットを受けるためには、VOC (顧客の声)を重視し、プロセスの改善を目的とすることが必要です。

シックスシグマをうまく導入して、業務改善に繋げましょう。

投稿者

  • デジタルトレンドナビ編集部

    システム開発、Webサイト制作、ECサイトの構築・運用、デジタルトランスフォーメーション(DX)など、デジタルビジネスに関わる多岐の領域において、最新のトレンド情報や実践的なノウハウを発信してまいります。